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【編集長インタビュー】
栽培コスト4分の1のイタリア水稲直播栽培 3カ月の現地密着研究から見えてきたこと
- (独)農研機構 中央農業総合研究センター 北陸研究センター 水田利用研究領域 主任研究員 笹原和哉
- 第96回 2013年02月15日
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日本とイタリアの稲作経営条件の違い
昆吉則(本誌編集長) 笹原さんがイタリアの稲作経営を研究するようになった経緯を教えてください。
笹原和哉 イタリアの稲作地帯を見に行って、低コストでコメが栽培できていることに興味を覚え、それを日本の稲作に導入できないか、と考えました。イタリアの稲作は平均作付面積が50ha、先進的な経営で200ha、1筆の圃場面積は2haです。労働費も安くありません。中国では労働費が安く、アメリカでは作付面積が大きすぎ、それに比べて、イタリアの経営条件は日本が手に届くレベルだと感じました。そこで、北イタリアのヴェルチェリという町に昨年の4~6月と9~10月に滞在し、3軒の農業経営者に張り付いて稲作経営に関する調査をしました。
昆 イタリアの農業経営者は日本とどのように違いますか?
笹原 地主、農業経営者、労働者がはっきり分かれています。地主と農業経営者は同じこともありますが、分かれていることが多いですね。土地、建物、乾燥施設等は地主が所有し、農業経営者はそれを地主から借りながら労働者を雇って農業を営み、利益を出します。地主は代々地主、農業経営者は代々農業経営を行なっていることが多いようです。
昆 農地改革の有無が決定的な違いとなっているのですね。経営と労働も分離しているのでしょう?
笹原 社会の役割として請け負っている構造はあるのかもしれません。労働者はイタリア語しか話しませんが、農業経営者は大卒で英語を話します。50ha規模の経営者は労働者を1~3人雇い、農産物を売って10a当たりると、水を求めて根が伸びてきますので、根が3く6000円の地代を払います。イタリアでは労働者の権利が強いため、半年以上雇うと継続して雇わなければならなくなります。にも関わらず、外国人労働者を雇っている例は少なく、お米を知らない人は雇いたくないと考えているようです。
昆 田牧一郎さんによれば、カリフォルニアでも圃場1枚が3、4ha以上になると水管理がしにくいそうですが、イタリアではどうですか?
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笹原和哉 ササハラカズヤ
(独)農研機構 中央農業総合研究センター 北陸研究センター
水田利用研究領域 主任研究員
1969年大阪府生まれ。1992年東北大学農学部卒。1993年より九州農業試験場(後に(独)農研機構 九州沖縄農業研究センター)勤務。1997~2009年 湛水点播(ショットガン)直播、暖地型稲麦大豆輪作体系の開発において経営評価を担当。2010年より(独)農研機構 中央農業総合研究センター 北陸研究センター勤務。現在、水稲超多収栽培、開発技術評価のプロジェクトに参加。農学博士。
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