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専門家インタビュー

美しい村を生むローカルの視点(続)

食と農のローカリゼーションの現代的な意義を描いた『シビック・アグリカルチャー』※1を巡って共感する、カルビー(株)の松尾雅彦相談役と獨協大学の北野収教授。二人の話題は、シビック・アグリカルチャーが日米それぞれで広がる可能性に移っていった。(取材・まとめ/窪田新之助)

元祖は日本にあり

松尾 ところでシビック・アグリカルチャーという概念はどうやって誕生したんでしょうか?

北野 トーマス・ライソン先生は、CSA※2の元祖は東京の世田谷にあると言っていました。

松尾 東京ですか、それは面白い。

北野 これは米国では定説なんですよ。1960年代、世田谷の大平農園による取り組みが元祖とされています。当時はまだ世田谷にも農地が残っていた時代。地元の人々との産直提携を通じ、「地産地消」をしていた。その農園は今もあります。ただ、世田谷がCSAの元祖とされた経緯は分かりません。

松尾 当時、産直提携が盛んになりましたね。

北野 「提携」という言葉は英語にまでなってますから。70年代、生協も含めた有機野菜の産直提携があったり、「よつ葉3・4牛乳」もそう。ライソン先生が授業で使っていた本にも、東京には顔の見える関係の農業があると書いてあった。

松尾 そうした話は米国にまで伝わってたんですね。

北野 ただ、残念に思うことがあります。「産直提携」は、外国へは「産直」ではなくteikeiという言葉が伝わった。英語での発音がしやすかったからかもしれません。一方、日本では今や「産直」と呼ぶのが一般的じゃないですか。これは悲劇です。大事なのは「産直」ではなく「提携」。生産者と消費者がパートナーシップを組むことに意義がある。「産直」はあくまで物流的なテクニカルタームで、「提携」は社会的な意味が込められている。言葉は大事ですから。

松尾 同感です。ところでシビック・アグリカルチャーは、なぜニューヨーク州のイサカ界隈で発達したんですか。

北野 それは、コーネル大学があることと、どちらかといえば進歩主義的な人たちが農村に住み着いたことが大きいでしょうね。68年、69年のニューエイジもいるようです。「イサカアワー」という世界的に有名な地域通貨もある。一種の知識人や教養人が近隣の農村に高密度に住んでいるんです。

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