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日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識

THCが多くても少なくても「無毒大麻」?

本連載では、大麻草を研究テーマに掲げて博士号を取得した赤星栄志氏が、科学的な視点でこの植物の正しい知識を解説し、国内での栽培、関連産業の可能性を伝える。海外では医療利用にも活用されている大麻草のTHC(マリファナ成分)。今回はTHCの毒性のリスクについて科学的に評価することで巷の誤解を払拭する。

THCが多くても少なくても「無毒大麻」?

 多くの日本人が「大麻草=扱ってはいけない植物」という認識を強く持っている。これは事実誤認である。規制されているのは、精神活性物質のTHC(テトラヒドロカンナビノール)が多く含まれる花穂と葉の部分だけ。国内の大麻取締法や国際的な麻薬に関する単一条約においても成熟した大麻草の種子と茎は、取り締まりの対象外である。

 産業利用以外では規制植物だが、欧米では嗜好品としての安全性評価の研究が行なわれ、法律と薬理学の不一致という問題を抱えている。大麻草は、麻薬ではなく単なる植物で、あえて規制するならTHCという化合物が対象となる。ところが日本では、THCはどれほどの身体的、精神的、社会的なリスク(危険性)があるのかという議論は全くない。それどころか「法律があるからダメ!」と思考停止に陥っている。日本には原発安全神話があったように「大麻危険神話」が存在するのである。


大麻草の薬理学的リスクはコーヒーと同じ程度

 図表1は、アメリカのドラッグ撲滅政策の司令塔である国立の薬物乱用問題研究所が発表したデータである。薬理学的には、最も中毒性が高いのはヘロインとアルコールであり、その次にコカインはニコチンと同じ程度で、マリファナ(大麻)は最も低いコーヒーのカフェインと同程度である。 

 しかし、法律で見るとあべこべである。厳格に薬理学的な健康リスクの判断のみで法律を見直すならば、お酒と煙草は全面禁止(違法化)となり、自宅の冷蔵庫に缶ビールがあれば麻薬所持で逮捕されるようになる。一方でコーヒーと同じ程度のマリファナは解禁(合法化)されてしまうのである。こうなると国際条約を根本的に見直する必要があるが、なかなか難しい。アメリカ(一部の州)、カナダ、オランダ、イギリス等の主要な先進国では、自国内の法律を運用して少量所持では逮捕しないという非犯罪化の対応をしている。

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