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【日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識】
THCが多くても少なくても「無毒大麻」?
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第3回 2013年02月15日
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危険性=毒性×摂取量で考えて判断するべき
「お酒で死ぬ人もいるよ」「農薬で自殺できるよ」という声が聞こえてくるが、まさに現在の化学物質は、単なる毒性だけの評価では片手落ちである。摂取量も一緒に考えることがポイントになる。お酒や農薬で死ぬのは、摂取量が多いからである。
GHS分類で評価すると、食品である唐辛子やコーヒーやお茶の成分の方がTHCより危険と言える。同じ区分4でもジャガイモの芽のソラニンの方がTHCより急性毒性が強いことが分かる。危険性を問題にするならば、辛口ブームで日本人の唐辛子摂取はかなり多くなってきており、毒性×摂取量の観点から見直した方が良いのでは?と思わなくもない。しかしながら、唐辛子等が科学的に少々毒だと明らかになったとしても、食品として許容されてきた歴史があり、これからも私たちは食べ続けるだろう。
THCの場合、ラットは急性毒性でLD50が計算できるのに、人間に近いイヌやサルでの実験では死なないため、毒性を評価できない。さらに呼吸や心臓の鼓動をつかさどる脳幹にTHCをキャッチする受容体が存在しないので、大量に摂取しても死なないことが明らかになっている。大量摂取での安全性は、お酒よりはるかに高い。実質的な致死量がないという意味では、THC濃度が少ない麻の品種であっても、医療や嗜好で使うTHCを高濃度に含む品種であっても、すべて「無毒大麻」と言えるのだ。科学的に有毒と呼ぶには、せめてGHS分類の区分2と区分3に該当する毒物および劇物程度のリスクがあるべきである。
合法=安全、違法=危険だとか、天然物=安全、人工物(いわゆる化学物質)=危険という単純な見方はなるべく止めた方が良い。自らの科学的教養のなさを露呈するみっともない行為になってしまう。
リスク(危険性)評価=ハザード(毒性)×暴露量(摂取量)という考え方が、化学工業系でない職種の方にはあまり馴染みがないかもしれない。放射性物質、食中毒、農薬、食品添加物、シックハウス、電磁波などの身近な生活において天然と人工を問わずに多くの化学物質に囲まれている。それらの生活への利便性とリスク評価を比較した上で、何をどこまで許容できるか、できないかを考えて判断することが重要である。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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