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農業経営者ルポ

米作りに「自信」はないが「責任」は持ってる

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第15回 1996年02月01日

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 「私かふるさと塾をやっているというより、会員の人たちがそれを創っているのであって、むしろ私は管理人です」という。そして。

 「この人たちは一般の農家よりずっと本物の百姓になっているのではないか」とも感じるそうだ。会員の中から八木町へ移り住み農家になりたいという人もでてきた。

 いくら会員の協力があって無農薬栽培ができるといっても、また一口に農業体験者を受入れるというが、西川さんだけでなく奥さんのたか子さんや家族の気遣いは大変なことだと思う。一人でやった方が気楽だし、家族への負担も小さいだろう。会員は素人なのだから、作業をしててもイライラすることもないわけじゃない。レンゲの種まき、肥料振り、稲刈りや田植えも手でしたいといわれる。機械でやった方が正確だし仕事も速いだろう。機械作業もしてもらうが、他のお百姓が見たら刈り株が長かったりして体裁悪いと考えるかもしれない。でも、それもよいのだと西川さんは考えている。

 西川さんは、「生産者というのは、たまたま米作りをさせてもらっているにすぎないいのではないか」という。たまたまその境遇に生まれたのだと。だとしたら、自分のものであると共に消費者のものだ。作っている内容を正直に伝えるのが生産者の使命だとも考える。それを伝え、確認してもらうための体験塾なのだと西川さんはいう。そして、それを伝える場が持て、生活環境が違ってもそれを感じる人々と一緒にできることを幸せだと思うと西川さんはいう。 

 「姑息に米を売りたいとは考えないし、農業体験を米販売の手立てにしているわけでもない。もしそうだったら会員たちも付き合ってばくれなかっただろう」 西川さんのは事は、単に無農薬米を生産するというだけでなく、社会教育的機能という農業や農家の新しいぼ事や役割の一つを示しているのではないか。人間の「自然とのけき合い方」を生産者、消費者という枠を越えて体験し実践できる場を作ること。そしてそれを、西川さんは経営として経済が成り立つスタイルとし、継続させるだけの管理能力と言葉を持っているということではないのだろう


西川佳男さん(37歳)
京都府船井郡八木町室橋東垣内30 TEL.0711-42-5177
たか子夫人と「米工房・西川有機農場」を経営。5haの完全無農薬・無除草剤・無化学肥料栽培を実践。同時に年間を通した農業体験塾を行い、その会員の協力で無農薬農業を実現している。無農薬栽培生産者であるとともに新しい農業の役割りを模索している。

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