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特集

売ることから発想するこれからの農業
作れるだけでは半人前!!

 とにかく数を売ることでPRしなければならないし、得意先で売上が伸び悩んでいたら、あえて特売をかけることで数字を盛り返すことも必要だ。一時的な赤字は覚悟の上。それでも年間を通して採算ペースに乗せなければ。電卓片手にさまざまな作戦を練るが、容易なことではない。なぜそこまで頑張るのか。 


【商品という感覚がなければ 誰も買ってはくれない】

「これまでは、作ったものをなんとか売らなきゃならんの生産者本位。でも、これからはあくまでもお客さんの立場に立って売らなければやっていけません」時代が代わり、流通に携わる人たちの考え方も変わって来ている以上、その商品を作る生産者も考え方を変えていくべきではないか。勝浩さんはそう考える。

 たとえば、雨が降らずに強風が吹き、天日で乾かしていた干し芋がホコリを被ってしまった。そんな時は洗い流して再び乾かさなければ商品にならない。しかし手間のかかる反面、ホコリといっしょに糖分まで流してしまうから、自ずと質も売値も低下する。生産者は「コストが合わないこと抗議するが、ホコリのついた商品を販売するわけにはいかない。

 もちろん、流通専門のバイヤーではなく、自身も農業者であるだけに、「こういうものを持ってきてください」の一言であとは知らんぷりというようなことは決してない。「雪の華」は「100%天日干し」を徹底している。悪天候の時には機械乾燥を使う他社に対し、この「100%」が、仕入担当者に説得力を持つのだ。しかし、悪天候の続いた一昨年は乾燥の途中で、雨に見舞われた。 

「そんな時は、うちに持ってきてくださいって言うんです」

 乾燥途中のスダレに乗ったままの干し芋がトラ。クで届けば、そのまま自社の倉庫に入れて雨が上がるのを待つ。高品質を保つためには、そんな生産農家のフォローも厭わない。

 PL法施行と同時に品質管理を強化したが、それ以前から高い品質と安全性には気を配っている。何かあったとき、消費者が最初にクレームをつける相手は小売店だ。中には「保健所へ持ち込むゾ」と脅しをかけてくる人もいる。そうなれば営業停止にもされかねない。そんなシビアさがあるだけに、小売店の品質管理への要求には真摯に対応してきた。

 食味、安全性、日持ち、安定した供給、価格……。すべてにおいていかに高い水準にある商品が見つけられるかどうかが、そのままその企業の盛衰に関わる。しかし、小売店や流通関係者の間に漂うそんな緊張感が、生産者には伝わっていないのを感じる。 

「まだまだ生産者が無知なんです」

 たとえば、無農薬で作ったものでも、虫がついているという理由で買ってもらえないことを「矛盾している」と嘆く農家が少なくない。しかし。 

「虫がついていたら、それはもう商品じゃない。お金を受け取るなら無農薬でも何でも最低限保だなきゃならない品質というものがあることがわかっていない」

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