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特集

売ることから発想するこれからの農業
作れるだけでは半人前!!

 生産者と流通業者、双方の現実を知るだけに、勝浩さんは、そんな生産者の認識、姿勢に歯がゆさを隠せない。

 いま勝浩さんが生産者に薦めているのは、「ファクスと携帯電話」を持つこと。せっかく業者や小売店と契約を結んだとしても、注文の電話が鳴った時に出なければそれで終わりだ。ファクスがあっても、それで発注書を受信しただけではだめ。納期を電話で確認するまで、仕入担当者は安心しないのだ。 

「小売店は市場と違うんです。欠品は、絶対に許されない」 


【流通業界は先行き不透明 直売という柱も育てる】

 さて、同社では、数年前、あるカタログ誌に「丸干し芋」を供給したことがあるが、これが爆発的にヒットした実績がある。1日数百ケース、1週間で数千ケースと出荷する日が続いた。

 しかし干し芋は水分を含むため、カビの心配がある。そこで出荷先には「1週間以内には発送」するように依頼していた。ところがそれにもかかわらず、1ヵ月も配送センターに在庫され、カビが発生するというトラブルが起きた。結局そのカタログ誌での通信販売は中止することにした。

 だがその一方、「ちゃんと管理して販売すれば、丸干し芋は確実に伸びる商品だ」と、通信販売での干し芋の商品力を確信することができた。ならば業者を介さず、独自に通信販売を始めてみよう。

 流通、小売業界は、依然として足の引っ張り合いに終始している。そこへ商品を納める者が、その流れに翻弄されるのは一面いたし方のないことだ。しかし、企業の経営者として、また」人ひとりの消費者からの支持をはっきりと意識している生産者として、商品を消費者のもとへ確実に届けられる、確かなルートを持ちたい。そう考えていた矢先のことでもあった。

 昨年通信販売の事業化を決定。顧客管理用のパソコンとソフトを導入し、通販専門の担当者も置いた。懸案だった送料も、宅配業者との交渉の結果かなり低料金で引き受けてもらえるようになった。

 通信販売なら、消費者からの注文はダイレクトに入る。またクレームもしかりだ。品質管理には、極力注意しているつもりでも、年に何度かは手厳しい声が届く。返品やクレーム処理の電話は、極力勝浩さんが自分で対応するよう心がけている。その時の対応如何で、お客をつなぎ止めることができるかどうかが決まるからだ。

 一番辛いのは「返品するが、代品は送らなくて結構」というタイプの電話。 

「ショックですよ。一枚だけ異常なものが入っていたとか。それも何万枚のうちの一つにすぎないんですが……」

 しかし、そんな厳しい意見を言ってくれるのは、往々にして干し芋が本当に好きな人なのだ。その時は怒っていても事情を説明して代品を送ると、またちゃんと注文が来る。

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