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特集

売ることから発想するこれからの農業
作れるだけでは半人前!!

「おはようございます。やおやです」

 1軒目の家には6時頃に着く。お馴染みさんの玄関先に声をかけると、エプロン姿の奥さんたちが三々五々ワゴン車に集まる。無理に走り回って客を呼んだり、無理に勧めたりということもない。実に淡々とした光景だ。

 作ったものを、料理する人、食べる人に直接手渡す。そこで交わされる何気ない会話が、その年の作柄、野菜の旬や見分け方、食べ方、調理法など、作り手のメッセージを自然に伝える。同時に、作り手は代金と一緒に消費者からのメッセージを受け取る。先日の作物はどんな味だったか、次はどんな野菜がほしいのか、どのくらいの値段がいいのか……。それが次の作物づくりに生かされる。

 最後の家を回り終えるのは、夕方の5時過ぎ。持ってきた品物はほとんどここで売り切ってしまう。足りなくなることもなければ、余って困ることもない。それはどうして?

「そりやあ、余さないように作ってるし、余さないように持って来てるもの」

 と、昭一さん。自明のことをなんて聞くんだ。そんな笑みがこぼれた。


ホウレン草年間40万束出荷。作柄に正直になれるから市場出荷は面白い
北島嘉典さん(茨城・結城)


 茨城県結城市の北島嘉典さん(堕成)は、ホウレン草を市場流通で年間40万束出荷する。作付面積は簡易ビニルハウス1.2ha(春夏秋冬で4回転)と、その時期の間を埋める数力所に散らばる合計2haの露地トンネル。収穫は朝か夕で、天候の状態や人手の問題などで2~3日の間が空くこともあるが、基本的に毎日出荷する。これまで1乗100円~150円で売ってきているが、人件費、機械その他の償却費を含め、総コストは1束80円ほどになっている。

 ホウレン草の他にはコシヒカリの種籾を2・5ha手がけていて、こちらは現在JA北つくばで責任ある立場にある。

 北島さんは夫婦と母親のわずか3名の家族労働(子供二人はまだ小さい)で、出荷時のパートタイマー(5~10名)の補助労働を得ながら、この農業経営を実現した。もともと、父親の代から白菜を作ると同時に他の畑で買い取って出荷する、いわゆる”菜っ葉屋”家業でやってきた。当時自前の畑は4haほどで、買い取りの畑は14~15haはあったそうで、この他に水稲(コシヒカリ)を2・5haに借地も含めて作っていたという。 

「父が亡くなって、私と妻、それと母だけの労働ですからね。これまでのような農業ができるだろうかって考えました。自分なりに新しいこともやってみたかったですし。ただ、当時はまだ”商売しよう”という感じはなかったですね」

 新しいことをと考えていた北島さんは、父の友人の高橋さんが夏にホウレン草を作っているのを見て気になりだした。そこで普及所に土壌改善診断をしてもらったが、答えは「ちょっと危険だ。何年か土壌改善してからならできるとは思うが」と否定的だった。

 しかし高橋さんや昔から付き合いのあった肥料会社の人は、『大丈夫、できるよ』と言ってくれる。北島家の白菜作りのうまさを見てきた肥料会社の人の「白菜美人ができるんだから大丈夫さ。嘘だと思うなら言ったとおり作ってみな」という励ましもあって、いろいろ教わりながら作り始めた。確かに作れた。

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