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レポート

業界を変える種子繁殖型イチゴ(前編)



 それからイチゴの苗づくりは通常、生産者が自らこなしている。10a当たりに必要な苗は、予備苗も含めて1万本前後。苗づくりだけで相当な手間がかかる。イチゴの生産者の平均年齢はおよそ60歳。育苗や農薬散布にかかる労力負担とコストの低減は、生産者が熱望するところだ。このことは、最近増えてきた植物工場ではなおさら当てはまる。

 国内の販売単価が減少傾向にあることも、生産者にとっては頭の痛い材料だ。単価を回復するには、通年での需給のアンバランスを解消しなければいけない。しかし、栄養繁殖型の品種では11月の出荷がかなわない。以上のような課題を解決する手段として、最近になり種子イチゴへの要望が強くなった。


増殖効率は5000倍

 一般に種子イチゴの最大の特徴は、5000倍という増殖効率の高さにある。これは栄養繁殖型の125倍に当たる。もちろん親株の保管は要らなくなる。研究グループの一員である千葉県はすでに、果実から種子だけを効率的に採取する方法を完成させている。

 種子イチゴは促成栽培にして種子を5月にまけば、11月から収穫できる。栄養繁殖型より育苗期間は1カ月短くなる。

 研究グループは「系統23」の特性をみるため、他品種との比較試験をした。糖度(Brix)は11.3、酸度は3.7、硬度は4.4。いずれの数字も「とちおとめ」と比べて遜色はなかった。ほかの特徴は、(1)鮮赤色で形の良い果実(2)収穫開始は11月(3)四季成り(4)出芽率80%以上――など。商品としての能力は十分に備えている。


遺伝資源の可能性

 ところで四季成りの種子イチゴの登場は、研究グループが予期していた以上に早かった。成果発表会の会場で農研機構・九州沖縄農業研究センターの曽根一純イチゴ育種研究グループ長は「まずは一季成りを作り、その遺伝資源を基に四季成りを育成するはずだった。それがいきなり四季成りだったので驚いた」と語った。

 これには運も働いたが、それだけではなく品種開発に向けた前例のない戦術も絡んでいる。つまり、研究グループはそれぞれが所有するイチゴの遺伝資源を交配用に持ち寄ったのだ。各県には品種登録せずに遺伝資源として保有している系統が多く眠っている。しかし、これらを自県にある種苗だけで交配させていても、そのパターンには限界が生じる。県同士で知的財産を共有したことが、「系統23」の誕生を早めたといえる。

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