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昆 では、ATOは政府機関なんですか?
スティーブ そうです。
昆 その45を超える協会は会員の費用で運営されているのですか? それとも政府の補助金ですか?
スティーブ いずれも会員が運営していますね。ただ、運営方法は協会によって様々です。例えば会費は生産量に応じて1パウンドにつきいくらとか。まったくのボランティアで運営している協会もあります。米国大豆協会はチェックオフと呼ばれる課徴金のシステムで運営されています。カリフォルニア・ワイン協会は個々のメンバーが自主的にカリフォルニアのワイン産業を守るという立場から参加していますね。
昆 その米国大豆協会ですが、実は私の読者である北海道長沼町の宮井能雅さんがそこのセミナーに出席しているんですよ。彼がなぜ参加するかというと、その年の大豆の値段が協会の言う通りになるから。協会には学ぶことが多いと言ってますね。
お客様に合ったマーケティング
昆 10年ほど前にフードサービス協会のシンポジウムがあって伺った時、米国大使館の方がこんなお話をされていた。米国には4つの食文化があって、それをパッケージにして日本の外食業に提供することができると。そこまで自信を持つのはすごいなと。日本にも優れた食文化はあるけれど、それほど明確なプレゼンはできていない。米国のようにきちっとプレゼンされるのが羨ましいと非常に思いましたよね。
スティーブ 米国がラッキーだと思うのは、非常に多くの資源を持っていることです。農地もその一つ。それで米国の農産物の生産は輸出市場に頼っています。それゆえ海外市場に合わせたマーケティングをするという素地があるわけですね。だから常にお客様のニーズに合わせるように務めています。
昆 米国ポテト協会は学校給食の先生に案内や指導をしていますよね。
スティーブ そういう時期もあったかと思います。ただ、今は学校給食に加え製菓やパン業界にターゲットを絞っているようですよ。
昆 ところで日本には「ライス・ファーマーズ・アソシエーション」や「ポテト・ファーマーズ・アソシエーション」といった、米国のような作物別に生産者がつくる団体はないわけですね。私は生産者が地域を越えたネットワークをつくり、一緒に営業をするということは日本にも必要だと思っている。だからATOや各協会の活動に学ぶことは多いと感じているんですよ。
スティーブ そうですね、生産者団体に関する米国のシステムについてはぜひともお話したいことです。実際に日本の政府関係者を米国にご案内して、システムを学んでもらっているんですよ。ただ45以上もの団体があるので、全ての仕組みを理解するのは非常に難しい。作物別に農家は個別に競争しながらも、業界団体としてはまとまっています。一戸の農家が複数の作物を作っている場合もあるので、いくつかの協会に所属しているケースもありますね。例えば豚肉の生産者は大豆やトウモロコシの協会の会員であったりします。餌として大豆やトウモロコシを作っているので。ですので、業界同士で緊密に結びついているケースもあります。
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スティーブ・シュニッツラー
1984年に米国農務省海外農務局に入局。海外農務局の科学技術部植物課の課長を務め、植物防疫や食品安全関連での米国産農産物輸出に対する貿易障壁の撤廃に尽力。これ以前は、同科学技術部畜産動物課の課長を務め、BSEや鳥インフルエンザなど貿易の障壁となる事態の解決に取り組む。海外農務局のマーケティング分野で、米国の園芸作物業界のためのマーケティング支援制度を管理する仕事に携わった経験もある。1989年から1992年の3年間にシンガポールのATO副所長も務める。2010年夏から現職。
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