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【海外レポート】
イタリアの稲作を見て日本の農業経営者へ伝えたいこと 前編 稲作をする環境の違い
- (独)農研機構 中央農業総合研究センター 北陸研究センター 水田利用研究領域 主任研究員 笹原和哉
- 第1回 2013年03月15日
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日本では、圃場の中に農機で入って、苗が倒れることを嫌う方も多いと思います。イタリアでは、苗が育った圃場に堂々と機械が入り、苗を倒しながら走っています。鉄の細い車輪を使っていますので、それほど多くを倒すわけではないのかもしれませんが、追肥をする最中に肥料が切れた時、補助員がいたにも関わらず、ブロードキャスタを取り付けたトラクタは自ら圃場を走って苗を倒しながら肥料の置いてあるところに移動し、また苗を倒しながら肥料を散布し終えたところまで戻っていました。全体が育てば、確かにこの程度のことは微々たる損失でしょうが、私は追肥作業の様子を動画に収めながら、心が落ち着きませんでした。読者の方でも少なからず、図1の作業風景に驚く感覚を共有されているのではないでしょうか。
このような全体が育てば、それで良しと感じるイタリアの経営者・労働者の感覚は「群落管理」と呼ばれています。一方、日本の生産者が持つ、一本も倒したくない感覚を「個体管理」と呼びます。群落管理の発想の方が、思い切った粗放的な農業が展開できるという強みがあり、低コスト化が重視されれば、日本にもこのような発想が求められてくる可能性があります。
経営者、労働者、地主が明瞭に分かれていると上述しましたが、経営者は地主の都合で急に追い出されることはないそうです。地主と経営者の契約は20年といった長期の単位で結ばれています。経営者の多くは親族を共同経営者にしており、経営者はリタイアしても経営が継承されていきます。子供のいない経営者では、甥や従兄弟などに継承されます。地主も継承されていきます。そして労働者についても、ある程度継承されていました。調査した経営体の一軒では、労働者の息子が農業専門学校を卒業し、父親が働く農業経営体に親子で勤めていました。調査した範囲では、三者がそれぞれ親族間で継承していくことが農業後継のスタイルのようです。
稲作に関する違い
ここからは稲作に関する特徴を日本と比較して整理します。
イタリアには、00年に約800万haの耕地面積がありました。北イタリアのロンバルディア州(州都ミラノ)東側、ピエモンテ州(州都トリノ)西側には、アルプスが北にあり雪解け水が流れこむ湿地で平坦な地域があり、そこに水田が集中しています。イタリアの稲の作付面積は、10年には25万ha。耕地面積の3%が水稲ということになります。
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笹原和哉 ササハラカズヤ
(独)農研機構 中央農業総合研究センター 北陸研究センター
水田利用研究領域 主任研究員
1969年大阪府生まれ。1992年東北大学農学部卒。1993年より九州農業試験場(後に(独)農研機構 九州沖縄農業研究センター)勤務。1997~2009年 湛水点播(ショットガン)直播、暖地型稲麦大豆輪作体系の開発において経営評価を担当。2010年より(独)農研機構 中央農業総合研究センター 北陸研究センター勤務。現在、水稲超多収栽培、開発技術評価のプロジェクトに参加。農学博士。
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