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岡本信一の科学する農業

生産現場では研究を行なうべきではない



数値管理手法も研究から開発が進み、実用化へ

 本来、研究も開発も必要であるが、生産現場では研究を行なうべきではない。農業の世界でも同じことで、研究と開発の意味をよく考えて、生産者は生産技術の開発に取り組んでいくのが望ましいと思う。なぜなら、研究というのは非常に困難であるし、成果が出るかどうか分からないために、費用対効果は不明なためである。しかし、開発は目標が明確であり、費用対効果を考えるのも比較的簡単に行なえる。その際には、生産技術をどこに向かって開発するのかという、目的に応じた技術の選択は不可欠である。

 なぜ、このようなことを書くのかというと、この連載で触れている数値管理の手法が、研究から開発の段階に差し掛かっているためである。実は、私自身もこの辺りの認識が曖昧だった。研究段階にあるときには数値管理を実用的に使えるまでのステップがまだ理解できていなかったのだ。

 数値管理の重要性は既にお分かりのことだろう。これまでも様々な数値管理手法があったが、土壌を分析して改良を行なっても大した効果がないというのが現在の風潮で、数値で管理するのは面倒なことだと目を向ける人も少ない。残念ながら、今でもあまり実践されていないのが実情である。

 まず書いておくと、土壌の化学分析が役に立たないということはない。土壌分析が滅多にされなかった当時、土壌分析は非常に強力でpHをあまり測定していなかった圃場での石灰の散布や施肥設計などに威力を発揮していたのだ。ところが、土壌分析を数回行なうと、あらかた重要な項目での改善が済んでしまい、土壌分析などをしても役に立たないように見えてくる。重要であることを忘れてしまうのだ。土壌の化学性のように、目で見て確認することができないものを確認できることの意味は非常に大きい。なかなか活用されなかったのは、まだ研究の段階で、活用できる技術には至ってなかったのかもしれない。これからは実際の現場で利用できる手法として開発を進める必要があるだろう。

 数値管理手法がますます重要になるのは間違いない。これを利用すれば、様々な技術や資材の導入効果の測定に威力を発揮することが分かってきている。どのような条件で、どのような資材を使用するべきなのかという判断が可能になり、経営方針に基づいて、どのような作物をつくりたいのか、その方向を明確にすることで、最も効率的に栽培する手法を容易に明示できるようにもなる。数値管理手法のどの部分が研究段階にあり、どの部分の開発が進んで実際に生産現場で利用できるようになってきたのか、今後、実例を含めて書いていこうと思う。

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