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シリーズ TPP特集

本誌1・25TPPセミナーより 暴かれたおばけの正体(下)

ついに日本がTPP交渉に参加する見通しとなった。2月22日(日本時間23日)に米国であった安倍首相とオバマ大統領との首脳会談で、TPPが「例外なき関税撤廃」でないことが明らかとなったためだ。「TPPおばけ」という事実無根の情報の中で最たるものが、偽りであると正式に証明されたといえる。弊社が1月25日に東京都内で開催した公開セミナー「TPP基礎・応用・実践講座」で、慶応義塾大学・総合政策学部の渡邊頼純教授は「例外はあくまで交渉の結果勝ち取るもの」と指摘していた。このセミナーで渡邊氏とキヤノングローバル戦略研究所・研究主幹の山下一仁氏は、他にもTPPおばけを挙げている。これから国内での議論が過熱するのを前に、両氏が糾弾した偽りの情報が何であるのかを抑えておきたい。そのことは、TPP問題を通して農業問題を考える上でも重要となるからである。一連のおばけがなぜ世間を浮遊するようになったのか、53ページで「解読」する。
■おばけ(8) 日本にTPPへの参加を強いるのは米国の陰謀。

むしろ米国は自動車業界を中心に、日本の参加を嫌がっている。

■おばけ(9) TPPに一度参加すれば、脱退はできない。

脱退は可能。過去のEPAでも脱退寸前の経験あり。

■おばけ(10) 日本は交渉力がないから、一方的に不利な条件ばかり押し付けられる。

過去のEPAでは交渉相手国からより多くの譲歩を引き出している。 EPAの関税撤廃率をみれば、日本に交渉力があることは明白。

■おばけ(11) アジアの成長を取り込むといっても、中国は入らない。

中国の政府関係者は、すでに参加の可能性を議論している。中国にとってみれば、米国への輸出でアジア諸国に遅れを取ることは容認しがたいこと。

■おばけ(12) 単純労働者が大量に入ってきて、国内の雇用が失われる。

TPPでは単純労働者について議論されていない。また、民主党のオバマ政権の支持団体である労働組合は単純労働者の受け入れに反対している。

■おばけ(13) 遺伝子組み換えの規制が撤廃される

 遺伝子組み換え食品は安全が認可されたもの。また、米国の無表示制度には豪州やニュージーランドも反対している。

 TPP反対本に必ずと言っていいほど記述がある「米国陰謀説」。輸出拡大を目論む米国だが、現行のTPP参加国は国内総生産(GDP)が小さい国ばかり。だから、GDPが世界第3位の日本にTPPへの参加をけし掛け、その市場を食いつぶそうというものだ。

 まず抑えておきたいことがある。それは、民主党のオバマ政権がTPP交渉参加を表明できたのは、同党最大の支持団体である労働組合が容認したということだ。

 労働組合は、基本的に自由貿易協定に反対の立場にある。カナダとメキシコが昨年入るまでのTPP参加国のうち、米国に工業製品を輸出する国はなかった。豪州やニュージーランドは農産物の輸出国であって、工業製品の輸出国ではない。だから、労働組合はオバマ政権に「GO」サインを出したのだ。

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