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当初から日本や韓国が入っているようなTPPであれば、労働組合は賛成しなかったはず。事実、日本が参加表明をした途端、全米自動車労働組合(UAW)とフォード社は組合員に日本の参加に反対運動を起こすよう呼び掛けた。また、自動車産業の中心地のデトロイトがあるミシガン州の一部議員たちも反対運動をしている。
おまけに米国の輸出額に占める日本の割合は約5%に過ぎない。しかも、対日輸出の大部分を占める工業製品については、すでに関税が相応に低くなっている。日本がTPPに入ったからといって、大きな輸出拡大は望めそうにもないのだ。これでも、反対派は「米国陰謀説」というのだろうか。
TPP交渉に一度参加すれば、日本にとって不利な結果となっても、それを飲まざるを得ない―。こんなデマがまかり通っているから、日本は未だに交渉にすら参加できずにいる。おばけに怯え、足踏みしている。
自由貿易交渉の専門家である慶応大学総合政策学部の渡邊頼純教授によれば、「一回入ったら抜けられないというのは、交渉の実際を知らない方が仰ること」。
TPP交渉に参加したからといって、最終的に協定に署名するかどうかはその国の判断になる。たとえ政府が署名したとしても、それを国会が批准するのかどうかはまた別の話。国会の批准手続きがない限り、その協定は発効しない。つまり、段階的に民主主義的なプロセスを経ることになっているのだ。
それにTPPに参加して妥結された後でも、日本にとって不都合であったら協定の内容を修正できる。もし修正が叶わなければ、場合によっては脱退することも可能なのだ。
交渉開始後の脱退が可能ということで、過去の交渉もみてみたい。たとえば慶応大の渡邊氏が首席交渉官を務めたメキシコとのEPA交渉では、日本側が交渉を決裂させようとしたことがあった。
2003年10月12日から14日にかけて、メキシコのフォックス大統領(当時)が来日。この時は交渉を終結させるターゲットイヤーであり、日本側はどうしても妥結させたかった。ところが、メキシコ側はフォックス大統領がいよいよ来日するとなっても、まとめる意欲をみせない。挙句の果てに、「こんな農業のオファーだったら駄目だ」と決裂させてきた。
日本側としてはフォックス大統領を国賓待遇で歓迎したのに、だ。
当時はちょうどマレーシアやタイ、フィリピンなどASEAN諸国とのFTA交渉が迫っていた。だから、日本側は「メキシコには一番後ろに並んでもらう」「上司からはタイとのFTAに回るように言われている」とつっぱねた。他の東南アジアを優先する素振りを見せたわけだ。これでメキシコ側は再び交渉の席に着くこととなった。
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