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【土門「辛」聞】
国民に目隠しをした通商交渉で国益を損ねた韓国の轍を踏むな
- 土門剛
- 第103回 2013年03月15日
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外務省のホームページには、交渉ごとに簡単な報告書が掲載されているが、協議の対象となったテーマが取り上げられているだけで、協議内容については、交渉に参加しても国民に正しく説明されることはない。しかも交渉参加国に厳しい守秘義務が付けられている。あたかも企業のM&A(合併と買収)交渉のようである。これについては11月28日付け日本共産党機関紙『赤旗』が、「交渉内容を公表しない合意があり、交渉文書は協定発効後4年間秘匿されることが、ニュージーランドのTPP首席交渉官の発表で分かりました」と明らかにしている。
直近の会合から農業に関連した市場アクセス分野に絞って協議の状況を整理してみた。
【第15回会合=12年12月】
▽貿易の技術的障壁、電気通信サービス、税関手続、衛生植物検疫といったより技術的な分野では、交渉担当者は問題を解決すべく、また、残された問題については妥結への明確な道筋を策定すべく取り組み、次回交渉会合までの間も作業を行なうことに合意した。
▽市場アクセスについても、首脳及び閣僚が設定した野心の水準を満たし、かつ全ての参加国が受入れ可能な全体的なパッケージの策定に向けて議論を継続し、作業の前進をみた。交渉担当者は、鉱工業品、農業、繊維に関する関税パッケージ及び原産地規則の策定に関する作業を継続した。また、各国のサービス、投資、政府調達の市場を開放するコミットメントに関しても議論を行なった。次回交渉会合で更なる進展が得られるように、交渉会合間の作業に関する予定表を策定した。
【第14回会合=12年9月】
▽市場アクセス、税関、原産地規則、貿易の技術的障害、衛生植物検疫、越境サービス、電気通信サービス、政府調達等を含む幅広い分野で進展があった。
▽鉱工業品、農業、繊維、サービスと投資、及び政府調達に関し、各国が作成している関税及び他の市場開放に関する特定の約束の策定も引き続き前進した。
外務省資料による前2回会合の報告を読む限り、「進展」や「前進」という文言が使われている。同じような文言は、その1年前の第9回会合=11年10月の報告書にも見受けられた。ところが、いずれの報告書にも、何が、どう進展、前進したかについては何の記述もない。まるで行き先の分からないミステリー・トレインが走り続けているような印象を受ける。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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