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韓国憲法は、条約を締結する権限を大統領に与え、議会は、大統領が締結した条約に同意する権限を有する。米韓FTA交渉の最終局面で北朝鮮による延坪島砲撃事件(10年10月)が起きた。これを交渉材料にした米国は、李前大統領に対し、韓国にとって屈辱的な条項を次々と飲ませたが、通商交渉法第6条は、通商交渉開始前に行政府による通商条約締結計画を提出させ、さらに第10条で計画に沿った交渉を義務づけ、大統領の独走にチェックをかけたのだ。
通商手続法の火付け役は、当時、最大野党の民主党代表の氏だった。その経緯を6月29日付け聯合ニュースが、「今後、通商交渉は国会が事前に介入できる道を開いておくべきだ」、「非公開の密室での交渉を進めたために穴だらけになった。政権交代の場合は通商手続法などを通じ制度的に国会が交渉に参加できるようにしたい」と伝えている。
奇遇だが、その孫鶴圭氏と、この1月31日夜、ドイツ・ライプチヒのレストランで夕食を共にしていた。同地で開かれた「BIOGAS展」に韓国の大学教授らと訪れていたところ、「今夜、大統領選候補だったベルリン滞在中の孫鶴圭氏と食事をすることになった。一緒に来ないか」と誘われたのである。孫鶴圭氏のことを11年11月付け本コラムで取り上げていたのに、その夕食会の時はすっかり忘れていた。もし覚えていたら、米韓FTA交渉と通商手続き法のことについて聞いておくべきだったと後悔している。
話が長くなった。韓国の例を持ち出すまでもなく、秘密裏に進められた通商交渉は、国民にメリットを与えるものではない。安全保障がテーマの交渉と違い、その結果は国民の経済生活に直結する。それだけに通商交渉の内容の情報公開は絶対に必要なことだと思うのである。
ちあきなおみの「喝采」には、「止めるあなた駅に残し」というフレーズもある。「止めるあなた」、約半数の自民党議員のことである。彼らを選んだのは、国民だ。「一人飛び乗った」安倍首相を担ぎ出した。最初は反対のポーズを取りながら、最後には抵抗をやめてしまう「ああ、これはこの前見た風景」(デジャ・ビュ)を思い浮かべてしまうが、TPP協定交渉でも、そうなるだろうか。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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