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【エクセレント農協探訪記】
商系業者に門戸開放。単協独自の卸機能強化で、流通改革を積極推進
- 土門剛
- 第7回 1996年02月01日
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商系業者に門戸開放。単協独自の卸機能強化で、流通改革を積極推進
商系の農業資材業者から「商系業者に門戸を開いて積極経営を図る農協が鳥取にあるよ」と聞かされ、急速鳥取西部農協に飛んだ。もとより保守的な山陰地方にそんな型破りな組合長が果たしているものか。本当にいたら、系統の資材流通が根底からひっくり返るのではないか。いや、ひょっとしたら農協もいよいよ大変革に向けての第一歩を踏み出したか。
そんな疑問を抱いていたから、竹中登組合長にはいきなり「鳥取県は、どちらかといえば系統がとても強い地区ではありませんか。商系に門戸開放したことで連合会から圧力はありませんでしたか」と、不躾な質問で切り出してしまった。
【経済連の卸機能を単協へ】
竹中組合長の答えは奮っていた。
「ご存知のように、鳥取県は農協合併が全国一進んでいます。2年前まで41農協あったのが、平成8年で3農協体制になるんです。合併してマンモス農協になれば、これまで県経済連が果たしていた卸機能が単協に移ってもおかしくはありません。私たちは、農業資材で独自の仕入れ機能を構築することを合併条件に掲げました。いまは、それを淡々と実践しているだけです」。
鳥取県は、すでに鳥取市甲心の鳥取いなば農協(組合員3万1673人)、米子市甲心の鳥取西部農協(組合員2万6655人)のマンモス合併があり、今年 12月には、倉吉市中心の新農協(名称未定。組合員2万1017人)が誕生して3農協体制になる。
竹中組合長は、独自の仕入れ機能が合併条件だったと言うが、実は合笠剛の旧米子農協組合長時代に実績がある。
いまから20年近く前の第二次石油ショックの頃、各種資材が軒並み高騰した。特産の白ネギを詰める段ボール箱は一時は60円から100円に跳ね上がった。当時は系統100%利用の優等生農協だったのだが、それだけ系統に協力していたにも関わらず、経済連から品不足を理由に商品の納入ストップを受けた。
系統の供給体制に不満を感じた。その矢先、今度は組合員から「よそでは安く売っているらしいよ」というクレームともつかない声が寄せられた。農協職員に調べさせると、白ネギの競合産地の静岡県磐田市では、旧米子市農協の仕入れ値より安い小売値がついていた。
「うちの農協の仕入れ値は約70円だった。それに10円ほどの手数料を乗せて80円で売っていたが、磐田市の生産者は67円で買っていたということだった。聞けば、これが相場だという。腰を抜かしてしまったね。もちろん経済連にクレームはつけたよ。でも値下げには動いてくれなかった。それで商系業者を入れて経済連を牽制することにしたのだ」
商系業者に門戸開放した効果はてきめんに表れた。行動に移しか最初の年度末に、系統との値段差13円は値引きということではなく、リベートの形で戻してくれたという。値引きだと県内の他の農協にも同じような値引き措置を講じなければならない。リベートの割り戻し原資は、他の農協の納入価格を上増して捻出した可能性がなきにしもあらずだろう。
これに味をしめた竹中組合長は、系統のシェアは7割、残り3割を商系業者と決め、門戸を開放した。最近では、そのシェアは6対4になった。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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