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レポート

業界を変える種子繁殖型イチゴ(後編)

産学官連携の研究グループが育成した種子繁殖型では国内初の四季成りイチゴは、その産業にイノベーションをもたらす可能性を秘めている。農業だけでなく種苗業界など関連業界も大きく変わるというのだ。どんな未来を描いているのか。(取材・まとめ/窪田新之助)

苗は買う時代へ

 「イチゴの苗は買う時代」「新しい種苗産業」「大規模生産・新規参入の促進」

これらは、研究グループ※注が1月末に三重県津市で開催した成果発表会で配ったパンフレットに書かれた文句だ。
 現在、イチゴの苗は生産者が自ら作るのが一般的。ただ、農水省の統計によれば、育苗にかかる手間は全労働時間の1割強に当たる。

 種子イチゴが普及できれば、11月出荷が可能になる。この時期の東京市場での平均単価はkg当たり1747円(2012年実績)以上。年間平均より500円以上高い。ただ、栄養繁殖型の品種では通常、促成栽培でもこの時期の出荷には間に合わない。生産者が種子イチゴを使って11月出荷に専念できるようになれば、苗の購入代を十分に賄える。そうなればメーカーが苗生産を請け負い、農家に供給するシステムが確立できる。まさに「苗を買う時代」の到来だ。研究グループはすでに、果実から効率的に種子を採集する方法を確立している。


種子イチゴは知財活用向け

 F1である種子イチゴの登場は、種苗業界にとっても意味が大きい。現在、国内の公的機関が育成した品種は、育成者権者には無断で世界各地に流通しているとされる。農水省の調べでも、「レッドパール」や「章姫(あきひめ)」などが海外の一部生産者に栽培を許諾された後、無断で増殖されている。

 国内外でイチゴを生産する農業者の一人は「中国のある場所で、日本の品種がほぼ全てそろっているのを見たことがある。福岡県が門外不出としていて、日本人でさえも手に入らない『福岡S6号(あまおう)』もね」と証言する。

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