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特集

創刊20年 今こそ問う! 水田農業イノベーションと農村経営者

昆 そういえば、橋本さんのおじいさんも行商やってたんだよね。

橋本 そうなんです。おじいちゃんたちは東京に行商してましたね。当時、おじいちゃんと親父は2人で作った野菜やコメを売って、月に100万円は稼いでいた。僕もそれを見て育ったので、お客さんはすごく身近に感じます。ライスセンターの経営でも、農地を農家さんから借りて経営しているわけで、農家さんがお客さんという感覚がありますね。

昆 今から20、30年前の月100万円だから、すごいよね。その行商を止めて、お父さんは今の経営を始められた。先見の明があるなと思います。というのは行商をやっても、トラック一台分の商売にしかならない。農家の稼ぎとしてはおいしいと思うけど、事業として考えた場合には今の形態になるんだなと感じましたよ。

橋本 そうですよね。

昆 黒野さんのところはトヨタ自動車のお膝元。橋本さんのところも東京に通勤している人がいるような場所でしょ。消費地が近い。それにどちらも地代が安いんですよ。僕は思うんですがね、農業以外の産業が成長したところほど、農業経営の可能性が出てくる。むしろ農業地帯の方がね、成長するのに足かせがある。地代がとにかく高いのは、僕が知っているところでは宮城の角田とか青森の弘前とかね。10a当たり3万円はしますから。基盤整備にお金がかかりすぎている。そして他産業が成長しない限り、農業も成長できない。他産業と競争するのではなく、一体的に考えてもらいたいよね。

【イノベーションは直播ではなく無代かき】

昆 一方でですね、技術的には農業地帯が先取りしている。たとえば乾田直播にしても、東北のメンバーが先取りしてやってきた。盛川周祐さん(岩手県花巻市)を中心としたメンバーが、技術的に自分たちのリスクで技術を確立してきた。安藤さんも盛川さんたちの取り組みを見てきたでしょ。どう感じてる?

安藤 盛川さんと知り合ったのは10年前ですかね。それまで家は近かったけど、あまり知らなかった。周りから聞く話では、変わり者だし、浮いているし。でも、スガノ農機主催の「土を考える会」では博士みたいなことを言うから、やっぱりすごいのかなと。盛川さんは30aの区画を1haにしたりとか、自己責任において水田農業の可能性を広げてくれた人ですよ。そのことは自分も経営の中にどんどん取り入れないといけない。まずやるべきなのは農地の集積化と感じてます。

昆 直播はどう?

安藤 乾田直播も湛水直播も何回かやりました。それで平均収量かそれに近いところまでいった。でも周囲には、代かきして田植えをするのが本来のコメづくり、という考え方が根強くて……。「コメの捨てづくりをしていてどうするんだ」みたいな誤解が地域にある、なかなか直播を増やせないんですよ。

昆 直播をすることがイノベーションなのではなく、無代かきにすることがイノベーションなんですよね。代かきという呪縛があるけど、なぜ代かきしないといけないんだ、ということを問うべきだよね。宮城の高橋伸君が無代かきにしたら、近くのおじさんが「水を入れておいたよ」と言うんだって。無知というか親切というかね、当人はチャレンジしていることなのに。

飯田 そういうの、ありますよね。うちも無代かきを最初にやった時、くるぶしまでしか足が埋まらなくて良いと思った。それを近くの高齢農家が「こんな浅くちゃだめだよ」と注意してくる。もちろん言い返しましたよ。「あんたが作っているよりよっぽど根は深く張るし、稲は倒れないし、刈る時にはコンバインは埋まらないし。これで良いんだよ」と。でも駄目だった。そんな様子だから、うちの他に無代かきをする人は出てこないですよね。

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