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昆 乾燥して軽くなったトウモロコシに水を吸わせて最適な栄養価に調整して与えたら、同じ結果になるんでしょうか?
竹下 ならないですよ(笑)。1回乾燥したものを水につけても、発酵しません。想像してみてください。大根を一度干したものを水につけて元に戻るかと言ったら戻らないでしょう? ただし、高水分で、なおかつ発酵させたものは輸送には向かないので、欧米でも高水分コーンは主に自家消費用です。近距離であれば輸送できますが。水分13~14%まで乾燥して収穫したものだから、海外に輸出できるようになるのです。
昆 日本でコーンサイレージをつくる場合、25%か30%の水分状態で刈り取って貯蔵しておいて、必要に応じてパックに詰めて、近距離の範囲内に送る。そうしたら、飼料価値が上がるというわけですね。
竹下 しかも、トウモロコシの憎いところが、一番収量が高い時に栄養収量も最大になること。牧草は、春のスプリングフラッシュの栄養価が高い時には収量がない。アルファルファも同じで、収量と品質が相反します。トウモロコシは栄養収量が最大の時に収量が最大で、その時点で刈ればいいので、貯蔵作物としては最高にいい。高水分コーンは、特に豚、牛にはいいですね。
昆 アメリカから持ってくるトウモロコシと、日本で生産するトウモロコシの価格を比較するという単純な問題じゃない。同じ量でも飼料価値で語れば全然違う。これは面白いです。子実コーンをつくって飼料会社に売るだけじゃなくて、自分でその商品を作ればいい。飼料価値の分だけ高く売れるということですね。
竹下 日本で生産することのメリットはここにありますよ。
関東以南なら二期作も可能 競争力のある水田作物に
昆 私は府県の水田で子実トウモロコシを生産することにこそ価値があると考えています。小麦や大豆に比べても競争力がある作物になると期待しているわけです。
竹下 北海道などでマルチ播種機の技術指導もしていますが、府県ならマルチなしで十分に作れます。生産性を上げる技術はどんどん出てきていますから。トウモロコシの種の進歩はものすごく早いですよ。
昆 他の水田作物と比べると、トウモロコシの競争力はずばり何でしょうか?
竹下 トウモロコシと小麦や稲、大豆との違いは何かというと、決定的な差は、品種改良のスピードでしょう。かつては親種を作るのに7年かかったけれど、今は2倍体や4倍体を使えば2年でできます。GM(遺伝子組み換え)技術を使わなくても従来の育種技術も遺伝子マーカーなどの新技術よって植える前に性質が分かるようになっています。
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竹下達夫 タケシタタツオ
パイオニアエコサイエンス(株)
代表
1947年生まれ。1969年一橋大学卒業後、三菱商事㈱勤務。80年イースタンハイブレッド㈱代表取締役社長就任。84年世界的な種苗会社パイオニア・ハイブレッド・インターナショナル社の日本法人パイオニア・ハイブレッド・ジャパン㈱代表取締役社長就任。2000年パイオニア・ハイブレッド・ジャパンの社内ベンチャーを分離・独立し、パイオニアエコサイエンス㈱設立。現在、代表取締役社長を兼務。
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