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【海外レポート】
イタリアの稲作を見て日本の農業経営者へ伝えたいこと 後編 稲作をする環境の違い
- (独)農研機構 中央農業総合研究センター 北陸研究センター 水田利用研究領域 主任研究員 笹原和哉
- 第2回 2013年04月12日
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さらに追肥と除草剤散布をもう一度行ないます。稲はその後、7月下旬頃に出穂し、8月中旬に完全に水田の水を落とします。
収穫
収穫適期は通常10月上旬です。イタリアでは直播の品種特性とその水田管理によって、収穫時に倒伏はほとんどありません。
43haの経営体では1979年製のコンバインを33年目の咋年も使い続けていました(図8)。時々の故障に修理を重ねて使っているようで、効率は3時間/1ha(20分/10a)でした。イタリアでは基本的に償却期間を11年として、残存価額を購入時の1割として計算します。実際はもっと高く売れているようです。
一昨年に大きな農業機械展示会が北イタリアで開かれ、その後多くの大規模経営体がクラース社製の大型コンバインLEXION750(図9)を導入しました。刈幅6m、466馬力で、50分/1ha(5分/10a)という高い効率で収穫作業が行なわれています。
収穫後の乾燥は通常、各経営体で行ないます。乾燥機と貯蔵庫はたいてい地主の持ち物なのですが、地主は地代だけをとる習慣になっています。経営者は光熱費を払って乾燥調製施設を使うことになります。籾水分14ないし13%と日本より少し乾いた状態で保存しているようです。
まとめ
日本とイタリアの稲作の重要な差異は、直播か移植かということ、そして圃場を均して漏水させない手段が代かきか、レーザーレベラーと部分的に水田用ハロー等を用いるかということです。雑草イネの繁茂を防ぐニセの播種や直播の水管理のコツはかなり明確になってきました。多く播種した稲は、少ない分けつで根がしっかりと張り、直播の安定した成功に至っています。北海道以外でも国内で50haクラスの経営が増えてきた中、群落管理の感覚に基づく、アバウトなようで緻密な稲作が次の世代の稲作の基本的な考え方ではないでしょうか。これは決して私たちの世界の外で行なわれていることではなく、ここのコメでイタリア人は寿司を楽しみ、ヨーロッパに駐在する多くの日本人向けに日本語でパッケージされたイタリア米が販売されています。日本のコメ作りのプロの皆さんの観点から、このやり方に勝る自分たちの新しいやり方を見出していただければ幸いです。
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笹原和哉 ササハラカズヤ
(独)農研機構 中央農業総合研究センター 北陸研究センター
水田利用研究領域 主任研究員
1969年大阪府生まれ。1992年東北大学農学部卒。1993年より九州農業試験場(後に(独)農研機構 九州沖縄農業研究センター)勤務。1997~2009年 湛水点播(ショットガン)直播、暖地型稲麦大豆輪作体系の開発において経営評価を担当。2010年より(独)農研機構 中央農業総合研究センター 北陸研究センター勤務。現在、水稲超多収栽培、開発技術評価のプロジェクトに参加。農学博士。
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