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日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識

繊維を分離する一次加工の方法(1)

本連載では、大麻草を研究テーマに掲げて博士号を取得した赤星栄志氏が、科学的な視点でこの植物の正しい知識を解説し、国内での栽培、関連産業の可能性を伝える。栽培方法に続くのは収穫後の大麻草から繊維を取り出す一次加工の工程。今回は麻茎の化学組成と日本一の麻繊維の産地、栃木県の事例を紹介する。

繊維を分離する一次加工の方法(1)

 麻の一次加工は、稲、麦、綿などの作物と比べて少し複雑である。稲や麦ならば、脱粒だけでよく、綿花は綿部分を機械的にとって繊維を分離することができ、紡績用に供給できる。しかし、麻などの靭皮繊維は作物の靭皮部に内蔵されており、繊維だけを取り出すには組織を壊す必要がある。繊維そのものは壊さずに取り出すことが品質と量の面で重要である。

 大麻草の繊維(以下、麻繊維)は、茎の皮の部分、靭皮部から採れる。成熟した茎の断面(図表1)を見ると靭皮部とその他の部分とがはっきりと分かれているのが見える。植物の成長には、2つのパターンがあり、ひとつは伸長成長で、茎あるいは根を形成する軸方向への成長である。もう一つが肥大成長で、茎や根の軸が放線状に太っていく成長である。

 麻繊維の成長は、靭皮部と木質部の間にある形成層と呼ばれる組織の分裂によって行なわれる。形成層が長期間の分裂活動を続けていけば、靭皮部と木質部ともに肥厚していき、それぞれが麻繊維(靭皮部)とオガラ(木質部)になる。靭皮繊維は、一般的に一次靭皮繊維と二次靭皮繊維に分けられ、一次繊維は株高10cmのときにすでに形成が始まる。二次繊維は株高1m前後のときに形成され、一次繊維と比べて粗く短くて木質化部分がある。最近の紡績技術では木質化が進んだ一次繊維や二次繊維は紡績加工時に除去される。


繊維を取り出す作業の要はレッティング工程

 麻はセルロース、ヘミセルロース、リグニン、ペクチン、灰分等から構成され、靱皮部と木質部では化学組成がやや異なる(図表2)。最近、世界各国の研究者らが行なった麻の化学組成分析から、品種や産地、収穫時期、収穫時間、皮剥ぎ方法、浸水時間の差によって化学組成に大きな違いがあり、同じではないことが分かってきた。麻は、ラミー(苧麻)やフラックス(亜麻)よりもリグニンやぺクチン、ヘミセルロースの含有量が比較的高いという。

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