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海外レポート

東アフリカ・ケニアの農業ビジネス探訪 意識改革とネットバンキングがアフリカ農業を変える

経済成長によってアフリカの諸都市への人口流入は年々増え続けている。アフリカ農業の問題は、広大な土地を持ちながらも、インフラが不十分なことや、農業技術レベルがまだまだ低いために、都市人口をまかなうだけの食糧生産ができていないことである。世界の食糧庫として農産物を輸出するどころか、現状では海外からの食糧、とくに穀物輸入をいっそう増やさなくてはならないという状況にある。アフリカ経済の専門家の平野克己氏によれば、「コメや小麦ではいまや世界貿易のおよそ四分の一、メイズ(トウモロコシ)やソルガム(モロコシ)では14パーセントほどがアフリカに吸収されていて、その割合は増えつづけている」という。

 では、経済成長を農村部の貧困解決につなげるには、どのような仕組みが必要なのか。それには経済成長によって都市住民の収入が増え、そのお金で農村でつくられた農産物がたくさん買われ、それが農村の収入増加をもたらすという回路が必要だ。しかし、アフリカの場合、アジア諸国などとちがって、経済成長が起きて都市の購買力が上がっても、それが農村に還元せず主要穀物をはじめとする農産物の輸入量が増えていくというルートをたどっている。このため経済は成長しているにもかかわらず貧困問題がなかなか解決しない、というジレンマに陥っているのである。

 マクロ的に見るならば、この問題の解決には経済成長で得た利益を農業部門へ投資したり、技術開発をすすめて生産性を上げたりことが求められる。だが、これは個々の生産者レベルでできることではない。

 これまで2回にわたってモリンガを扱うエリザベス・ムボゴの事例を紹介してきた。そのポイントは「輸出向けに特化した換金作物ではなく、国内生産者の栄養状態の改善と収入の底上げ」をベースにしたアグリビジネスの展開にあった。しかし、その実現がけっして容易ではないのは、いま述べたような国内事情にくわえて、ムボゴによると「生産者と消費者の〈農〉と〈食〉に対する意識」の問題があるという。

 「生産者への教育と、消費者への啓蒙は重要なポイントだと思います。穀物の買い取り価格は高くないので、農家としては換金作物をつくりたがります。その代表格は紅茶とコーヒーですが、これは規模が必要であり、競争も激しく、栽培管理も複雑です。でも、ケニアでいちばん多いのは、そうした管理を可能にする資金力のない小規模農家です。そうした生産者が小規模ながら、生活を成り立たせていくきっかけになるのがモリンガのような作物です」

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