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座談会 成長産業のタネ

インフルエンザ対策や知的財産の保護にむけ薬用植物栽培への国家戦略の確立を

高齢化と健康意識の高まりで漢方薬や健康食品の需要が増加しているなか、薬用植物の国内栽培の確立が急務となっている。薬用植物の栽培技術はどこまで進んでいるのか。研究や制度は今後どのような整備が必要なのか。薬用植物に精通する識者に現在の状況と今後必要な取り組みについて聞いた。                 (企画・取材・文/松田恭子)

インフルエンザにも効く漢方薬は国家として戦略を考えるべき

長根:弊社、新日本製薬グループは新日本製薬が販売会社で化粧品、健康食品、医薬品の通信販売事業を行っており、新日本医薬は薬草植物研究や植物素材商品のOEM生産を行っている。また、甘草研究の第一人者である草野源次郎博士に勧められたのがきっかけで甘草を手掛けるようになった。

加藤:私は全農で代表理事専務をしていた時代から薬用植物に関心があったものの事業として動かすことができなかったため、理事を退任してからJA等の薬草栽培の支援に入っている。そのような中で昨年NHKの「クローズアップ現代」を見て、渡辺先生の話に感銘を受け、農協新聞で対談をさせていただいた。

渡辺:「クローズアップ現代」では、日本の漢方薬は最先端医療と伝統医療がつながっており、大きな知的財産を生む種がたくさんある。しかし、中国・日本の世界標準をめぐる戦いが激化しており、政府も民間も将来に向けた国家戦略を作るべきだという話をした。しかし、生薬生産は農水省、医薬品産業は厚労省、産業は経産省が担当で連携が取れていない。危機的な状況を何とかしようと情報発信している。

加藤:最近、ようやく厚労省と農水省が薬用植物について話し合いを始めたが、まだアンケート調査の段階。これでは遅い。渡辺先生のいうバリューチェーンを一気に作り上げないと遅れは取り戻せない。

日本の農業機械は、手作業で行う動作を機械化して技術体系を作ってきた。また、農薬取締法は生産者にとって大変厳しい規制だったがそれを逆手に安心安全について強いイメージを発信することができる。そういう農業技術の知的財産が薬用植物には全く導入されていない。学問の分野でも従来、薬用植物の研究は薬学での成分の抽出が中心で、品種改良については全く顧みられてこなかった。各大学の薬草園はただ薬用植物を集めただけで、私に言わせれば趣味の世界。他方、製薬会社との契約栽培でも栽培ノウハウは高齢化した農家が口伝として持っているだけで、技術革新がなかった。

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