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編集長インタビュー

ラジコンヘリ暴走なんて有り得ない設定だけど…

かつて真山仁氏は世間一般で語られる先入観に縛られた農業イメージを持っていた。しかし、多くの人に取材していくうちに全く違う農業が見えてきたという。「黙示」とそのプロローグともいえる前著「プライド」には、農家、農水官僚、政治家、農薬業界人などが登場する。そして、農薬や遺伝子組み換えなどの農業技術や農業政策、農村社会そのものも話題にされるが、単にそれを批判するのではなく、読者自身に自らの有り様を問う作品になっている。

官僚批判するより、彼らには誇りを持ってほしい

 昆吉則(本誌編集長) 最新刊の『黙示』を読ませていただきました。農業を取り上げる小説は多いです。でもステレオタイプな農業理解を前程とした作品ばかりで、僕らは毎回イライラしていた(笑)。そこを正面からやっていただいて、非常にありがたいと思いました。

 真山 ありがとうございます。

 昆 たとえば冒頭のラジコンヘリが暴走する場面。あの箇所は「読んだら激高するかもしれませんよ」と言われていたので、心配していたんです(笑)。農業界の反応はいかがでしたか。

 真山 連載開始当初、一部では叩かれましたね。ただ小説としては、無関心な人に関心を持ってもらうため、強烈なインパクトも必要なので、あのような書き出しにしました。農薬ネットを運営している西田さんを取材した際、『ハゲタカ』を読まれていて、「ここまで踏み込んでくれるんだったら、農薬についてもしっかり書いてほしい」と言っていただきました。そこで冒頭のアイディアを説明したら、しばらく天を仰いでましたが、「いいんじゃないんですか」と。西田さんが取材協力していたことが知れ渡ると、反発も収まりました。

 部外者がひとつの業界を取り上げる場合、どうしても遠慮してしまいがちです。でも無理に良く書こうとすると怒られて、実はちゃんと書いた方が文句を言われない。『ハゲタカ』を書いた時も、最初に投資銀行の関係者が反応して「世間はこういう内情を知らないから我々はめちゃくちゃ言われていた。それをよく書いてくれた。誇りを持てる」と褒めてもらいました。

 昆 農業は金融以上に特殊な業界ですから、反応の温度差はあるかもしれませんが、私は「科学的な視点を持って当たり前に考えてみよう」という誠実な姿勢で、農業を優しく見ているなと感じました。ただし、ある元農水省の人間は、真山さんの小説を「官僚に期待しすぎだ」と評していました(笑)。

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