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【編集長インタビュー】
ラジコンヘリ暴走なんて有り得ない設定だけど…
- 小説家 真山仁
- 第99回 2013年05月20日
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官僚批判するより、彼らには誇りを持ってほしい
昆吉則(本誌編集長) 最新刊の『黙示』を読ませていただきました。農業を取り上げる小説は多いです。でもステレオタイプな農業理解を前程とした作品ばかりで、僕らは毎回イライラしていた(笑)。そこを正面からやっていただいて、非常にありがたいと思いました。
真山 ありがとうございます。
昆 たとえば冒頭のラジコンヘリが暴走する場面。あの箇所は「読んだら激高するかもしれませんよ」と言われていたので、心配していたんです(笑)。農業界の反応はいかがでしたか。
真山 連載開始当初、一部では叩かれましたね。ただ小説としては、無関心な人に関心を持ってもらうため、強烈なインパクトも必要なので、あのような書き出しにしました。農薬ネットを運営している西田さんを取材した際、『ハゲタカ』を読まれていて、「ここまで踏み込んでくれるんだったら、農薬についてもしっかり書いてほしい」と言っていただきました。そこで冒頭のアイディアを説明したら、しばらく天を仰いでましたが、「いいんじゃないんですか」と。西田さんが取材協力していたことが知れ渡ると、反発も収まりました。
部外者がひとつの業界を取り上げる場合、どうしても遠慮してしまいがちです。でも無理に良く書こうとすると怒られて、実はちゃんと書いた方が文句を言われない。『ハゲタカ』を書いた時も、最初に投資銀行の関係者が反応して「世間はこういう内情を知らないから我々はめちゃくちゃ言われていた。それをよく書いてくれた。誇りを持てる」と褒めてもらいました。
昆 農業は金融以上に特殊な業界ですから、反応の温度差はあるかもしれませんが、私は「科学的な視点を持って当たり前に考えてみよう」という誠実な姿勢で、農業を優しく見ているなと感じました。ただし、ある元農水省の人間は、真山さんの小説を「官僚に期待しすぎだ」と評していました(笑)。
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真山仁 マヤマジン
小説家
1962年大阪府生まれ。87年に同志社大学法学部政治学科卒業。同年4月に中部読売新聞(のち読売新聞中部支社)入社。89年11月同社退職。91年フリーライターとなり、2004年『ハゲタカ』(ダイヤモンド社)でデビュー。07年『ハゲタカ』、『バイアウト』を原作としたドラマが大きな反響を呼んだ。徹底した取材と緻密な文体で現実の深層を見抜く、本格社会派の旗手として注目を集めている。
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