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【日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識】
繊維を分離する一次加工の方法(2)
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第6回 2013年05月20日
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繊維を分離する一次加工の方法(2)
大麻草(以下、麻とする)の茎から繊維を分離するには、レッティング(retting)と呼ばれる工程が必要となる。雨露法、温水法、冷水法、池浸水法、堆積発酵法、生茎晒し法などの様々な微生物利用法がある。前回は栃木県で広く使われている堆積醗酵法を取り上げたが、今回は木灰汁煮法と皮麻(かわま)を製造するための麻蒸法を紹介する。
大麻繊維には精麻(せいま)と皮麻(かわま)の2つの種類がある。前者は、大麻繊維につくペクチン質、木質、表皮などの夾雑物を除いた繊維質のみのことで、後者は、夾雑物を取り除かずに木質部(おがら)から単に靱皮部を分離しただけのものをいう。精麻と皮麻にはそれぞれに適した用途がある。良い繊維を生茎から取り出すためには、靱皮部と木質部をつなげているペクチンを上手に取り除き、繊維質をなるべく腐敗・劣化させないことが重要である。ペクチンとは、植物の細胞壁の構成成分で、セルロース等他の成分と結合して、植物細胞をつなぎ合わせる「セメント」の働きをしている天然の多糖類である。
事例紹介 (2)長野県の木灰汁煮法
長野県の美麻村(現・大町市)や鬼無里村(現・長野市)では、堆積醗酵法よりも強靭で高品質な繊維をつくるために、木灰で麻茎を煮る方法が行なわれてきた。
1)麻切(おき)り
茎葉が黄色味を帯び、茎の下部の葉が落ちる頃が麻切りの適期である。収穫は種まき後100~120日(7月下旬~8月上旬)。最も大切なことは天気の良し悪しで、3~4日の晴天続きを予想して、麻を抜き取る。
2)麻干(おほ)し
麻干しは好天下で5日くらい、茎が黄白色に干し上がるようにする。その間の茎の管理は特に大変で、夕立など雨に遭わぬよう、また腐らないように注意する。ゆり干し(一時干し)の翌日、畑に薄く広げてさらに干し、夜露に遭わぬよう20~25束を一カ所に寄せ、上に菰(こも)(麦わら製のムシロ)をかける。干上がった麻束は家に運び込み、9月の麻煮(おに)の時まで台所や馬小屋の二階に保存する。切り落とした根はかつて燃料、葉は肥料などに使われ重宝された。麻を収穫した後の畑には秋ソバや野菜などを栽培した。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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