ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

中国産の榊ありがとう、これからは国産が頑張ります!


「西武鉄道はそういう商売をしていませんから」
何度電話しても埒(らち)が明かない。そこで約束なしで突入する。所沢市にある西武鉄道の管財課へ。担当者は不在だったが、後日その人から電話をもらった。たまたま山にいる時だったので、そのままニッカズボンと安全靴、頭にはタオルを巻きつけたまま駆けつけた。到着すると、その姿を見て周りの職員は笑っている。でも、山好きだった担当者とは意気投合して、翌日から榊を伐採させてもらえることになった。ただし、3つの条件付きである。
(1)山にいるホームレスを追い出す
(2)山への不法投棄を防ぐ
(3)山で自殺する人を食い止める
この条件に快諾した佐藤は、以後、ゴミ拾いをしながら、榊の伐採を始める。

商品の開発と迅速な出荷

好きなだけ榊を入手できるようになったものの、大きな課題が残された。売り方である。榊の仕立て方にしても販路にしても詳しい人が周りにいない。だから、市場関係者や生花店に貪欲に話を聞いて回った。そこでまず分かったのは、天然の榊は泥が付きやすいので丁寧に取るということ。また、ツバキ科なので磨くほどに艶が出てくる。私の前で佐藤が指でこすると、確かに葉が生き生きと輝きだした。
取材する中でほかに分かったのは、決まった仕立て方などないということだった。そこで集めた情報を総合して、独自の仕立て方や商品を作り出した。
たとえば7ページの写真にあるような、神棚に供える「造り榊」のほか、紙垂を付けた「玉串」や「祓い榊」。あるいは土木や建設の工事向けに、「玉串」「祓い榊」に青竹やしめ縄を付ける「地鎮祭セット」を扱う。いずれも神道行事でそのまま使ってもらえる格好にしてある。
佐藤によれば、こうした商品はこれまでないに等しかった。では、喪主や神主はこうした格好の榊をどうやって仕入れていたのか? こう問いかけると、次のような答えが返ってきた。
「だから、みんな困っていたんですよ。たとえば地鎮祭では施主と神主、工務店同士が擦り付け合いをしているんです。で、最終的には誰かがそれらしく仕立てるんですが、まともな格好になっていないんですね。このあいだ不動産会社に勤める友人に聞いたら、同じことを言っていましたから間違いないです」
顧客が感じているこうした要望をくみ取り、商品開発につなげたところに、同社特有の強みがある。もう一つの強みは迅速な出荷にある。佐藤によれば、通常の生産者であれば、エンドユーザーが発注してから届けるまでに1週間ほどかかる。というのも、エンドユーザーと生産者の間には生花店や市場が介在するので、相互の連絡に時間がかかっているわけだ。もちろんこれだけの時間を要すると、神道葬儀などの急な注文には対応できない。

関連記事

powered by weblio