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「ケニアの紅茶の生産は徹底した品質管理にあります」とワイナイナ氏はいう。「われわれは農薬を使いません。そして、品質管理についてのさまざまな国際認証を取っています。何より気をつけているのは、お茶の生産と自然環境との調和です。茶を生産することで環境が破壊されることがあってはなりません」
これは率直にいって意外だった。茶の生産や輸出が伸びている背景には、実は労働搾取や環境破壊といったネガティブな面もあるのではないかと思っていたからだ。とはいえ、ファクトリーの入り口には「Sustainable Tea Farming」(持続可能な茶の栽培)といったスローガンが掲げられ、事務所や工場には環境保護についての啓蒙ポスターが張られている。そのことに感心したことを伝えると、ワイナイナ氏は「それがケニアの紅茶の成長の秘密です」といった。
「農薬は絶対に使わないだけではなく、お茶の葉を蒸すための燃料には間伐材など特定の木だけを使う。茶摘みでは機械を使わず、新芽とその下の二枚の葉を手で丁寧に摘むなど細かい取り決めがあります。紅茶の生産が環境を破壊してしまうならば、それは結局産業にとってマイナスになる。環境と共存していく方法を取ることが紅茶の品質に加えて、商品価値を高めてくれるんです」
ケニアの紅茶生産はその6割以上が小規模農家によって行なわれている。マタアラでも生産者はみな小規模農家だ。そうした小規模農家を地域の経済を担う共同体としてまとめあげているのが、このマタアラ紅茶ファクトリーなのである。そこでは生産者と企業が密接に結びついて、より質の高い、しかも付加価値のある紅茶をつくるための工夫や努力がなされている。マタアラ村そのものは、アフリカの典型的な小村なのだが、そこで高い意識の品質管理が実践されていることには驚かされた。
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田中真知 タナカマチ
作家・翻訳家
1960年東京生まれ。作家・翻訳家。1990年より1997年までエジプト在住。著書に『アフリカ旅物語』(北東部編・中南部編、凱風社)『ある夜、ピラミッドで』(旅行人)、訳書にグラハム・ハンコック『神の刻印』(凱風社)、『惑星の暗号』(翔泳社)など。
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