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特集

『奇跡のリンゴ』が上映中の今こそ、農薬の存在価値を語ろう


残留するレベルの農薬は問題ないです。前例で説明しますと、リンゴでの基準値が1ppmとして適用のないキャベツから0・02ppmが検出されたとしても、ADIを超える恐れはないと思われます。すなわち、いろいろな作物を1日に摂取したとき、トータルでADIを超えるかどうかが問題ですので、実際はまだ余裕のあることが少なくありません。ただし、厚労省の食品衛生法上では、残留基準を超える食品は市場流通させてはいけない決まりになっていますので、当該作物は回収・廃棄されることになります。


――農薬の安全性について理解できました。ただ、世間では「農薬=危険」というイメージが強いようです。
農薬に悪い印象があるのは化学合成物質への抵抗感に対し、天然物のほうこそ安全であるという思い込みなんですね。「天然=安全」というのは神話であって、毒性の強い天然物も多く、またすべての天然物の安全性が十分に調べられているわけではありません。一方、農薬は試験研究で毒性が評価され、それを回避する方法が最も分かっている物質だといっても過言ではありません。自然界にはフグやキノコなど、危険な毒が数多く存在しており、食中毒のほとんどはそうした天然物が引き起こしているというニュージーランドの研究発表もあります。日本で食品事故で死亡したり、食中毒を起こすケースも、天然毒やウイルス、細菌由来のものが多く、残留農薬で起こることはありませんでした。

ですから私たちは、「毒性とは何か、もう一度考えてください」と主張しています。たとえば、食塩は食品の味を良くしたり、保存性を高めてくれます。しかし、適量を守らず、一度にまとめて摂取したり、長期的に大量摂取すれば、体に不調を来します。つまり、天然物質でも摂取する量やバランスによっては体に良いものになったり、毒になったりするわけで、「化学合成物質=危険」と考えるのは誤りです。


――化学合成物質ということでは、極微量の化学物質に反応し、体や精神に不調が現れる「化学物質過敏症」も農薬が原因だという説がありますが。
化学物質過敏症で体が不調になった方がいらっしゃっり、大変苦労されていると聞いています。しかし、症状や進行も多種多様で、病気の定義自体についても意見が分かれており、まだ十分解明された病気ではないという認識を持っています。いろいろな物質が影響を及ぼすなかで、農薬が影響の一因かもしれませんが、因果関係を証明した試験研究はありません。今後の研究を待ってみないと答えは出せないでしょう。

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