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【専門家インタビュー】
米韓FTAを通してみるTPPの誤解
- 大東文化大学 経済学部社会経済学科教授 高安雄一
- 2013年06月14日
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ネットで反米感情
持ち上がる
――2010年10月に民主党の菅首相(当時)がTPP交渉への参加を表明してから、反対派の間では「韓国の二の舞になるな」が合言葉のようになってきましたね。
あのときを境に、急に米韓FTAが注目されるようになりました。それまでは誰も話題にしなかったんですけどね。
――米韓FTAを巡って、韓国ではどうやって反対論が起きたんです?
あれはもともと、ネット上で始まったことなんです。米韓FTAの条文一つひとつを読むと、韓国にとってあまりに不利な内容になっている、と。たとえば、米国で狂牛病(BSE)が発生しても輸入禁止措置を取れないだとか。あるいは、米国から賭博やアダルトサービスが入ってきてもそれを規制する手段を講じられないだとか。いずれも事実ではないですが、そういったいろいろな情報がネットで飛び交うようになったんです。それで、農民団体が「全国農民連帯」「全国農民会総連盟」というような反対組織をつくっていった。
――事実ではない情報を基になぜ反対したんでしょう? 別の動機があったんですか?
おそらくは反米感情。実は韓国にとっては中国とのFTAのほうが被害は大きいとみられています。でも、韓中FTAではあまり組織だった反対はないんですよ。なぜなのか? この話は裏を取っていないので定かではありませんが、韓国のある高名な農学者に聞くと、米韓FTAでは反米運動を主とする団体の主導者が旗振り役を果たして、農民らの組織化に動いたというんです。農民が危機感をもって連帯したというより、反米運動とくっついて反対勢力になったというのがその農学者の見立てですね。
――やがては韓国の国会でも大もめになりましたね。
米韓FTAを批准する直前に政争の具とされてしまった。野党にしてみれば、これはなかなか面白いじゃないか、ということでしょう。これらを「ラチェット条項」や「未来最恵国待遇条項」など12の項目別に分類して、野党がまとめたのがいわゆる「毒素条項」。ただ、ネット上で騒がれている情報をまとめただけなのでそれほど精緻なものではありません。
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高安雄一 タカヤスユウイチ
大東文化大学
経済学部社会経済学科教授
1966年生まれ。90年に一橋大学商学部を卒業後、経済企画庁入庁。99年に外務省在韓国大使館二等書記官、2000年に同一等書記官などを経て、10年から大東文化大学経済学部准教授、13年教授。著書に『TPPの正しい議論にかかせない 米韓FTAの真実』のほか、『韓国の構造改革』『隣りの国の真実 韓国・北朝鮮篇』がある。韓国農業に関する論文も多数。
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