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専門家インタビュー

米韓FTAを通してみるTPPの誤解

2012年3月に発効した米韓FTA。直前にその是非を巡って巻き起こった韓国での反対の論調は、日本でもTPP交渉への参加を退ける材料としてそのまま使われてきた。大東文化大学経済学部の高安雄一教授は、この点にTPP反対派の危うさをみる。日本における韓国経済の第一人者に、7月に見込まれる交渉参加にあたって隣の国から学ぶべきことを聞いた。(取材・まとめ/窪田新之助)



ネットで反米感情
持ち上がる


――2010年10月に民主党の菅首相(当時)がTPP交渉への参加を表明してから、反対派の間では「韓国の二の舞になるな」が合言葉のようになってきましたね。
あのときを境に、急に米韓FTAが注目されるようになりました。それまでは誰も話題にしなかったんですけどね。

――米韓FTAを巡って、韓国ではどうやって反対論が起きたんです?
あれはもともと、ネット上で始まったことなんです。米韓FTAの条文一つひとつを読むと、韓国にとってあまりに不利な内容になっている、と。たとえば、米国で狂牛病(BSE)が発生しても輸入禁止措置を取れないだとか。あるいは、米国から賭博やアダルトサービスが入ってきてもそれを規制する手段を講じられないだとか。いずれも事実ではないですが、そういったいろいろな情報がネットで飛び交うようになったんです。それで、農民団体が「全国農民連帯」「全国農民会総連盟」というような反対組織をつくっていった。
――事実ではない情報を基になぜ反対したんでしょう? 別の動機があったんですか?
おそらくは反米感情。実は韓国にとっては中国とのFTAのほうが被害は大きいとみられています。でも、韓中FTAではあまり組織だった反対はないんですよ。なぜなのか? この話は裏を取っていないので定かではありませんが、韓国のある高名な農学者に聞くと、米韓FTAでは反米運動を主とする団体の主導者が旗振り役を果たして、農民らの組織化に動いたというんです。農民が危機感をもって連帯したというより、反米運動とくっついて反対勢力になったというのがその農学者の見立てですね。
――やがては韓国の国会でも大もめになりましたね。
米韓FTAを批准する直前に政争の具とされてしまった。野党にしてみれば、これはなかなか面白いじゃないか、ということでしょう。これらを「ラチェット条項」や「未来最恵国待遇条項」など12の項目別に分類して、野党がまとめたのがいわゆる「毒素条項」。ただ、ネット上で騒がれている情報をまとめただけなのでそれほど精緻なものではありません。

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