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根強い国産指向、米国産の
競合相手は豪州産
――でも、米国産牛肉の価格は関税40%分だけ下がるわけですよね。それでも7、8%で済むんですか?
それは米国産と競合するのは豪州産だからです。韓国産の牛肉は「韓牛(はんぎゆう)」と言って、韓国ではブランドなんですね。国産牛には米国産や豪州産の倍のお金を出してもいいという人は多いんです。一つには味があるんでしょう。まあ、私にはいまひとつその良さが分からないのですが……(笑)。それから安全性もあるので国産は差別化できる農産物である、と。牛肉などいくつかの食材については原産地を書かなくてはいけないことになっているんですね。消費者は国産か外国産かを選択できるようになっています。それで、安全で味がいいという韓国産が支持されているわけですね。これはデータでも裏付けされています。
――というと?
さっき話した韓国農村経済研究院の農業観測センターが消費者にアンケート(11年に報告)をしたんです。ロース肉500gに対して、産地別にいくら支払うかということで。結果は国産が1万7165ウォン、米国産が5434ウォン、豪州産が6300ウォン。カルビ肉については国産が1万5998ウォン、米国産が7030ウォン、豪州産が8200ウォンでした。つまり、米国産の2、3倍の価格を国産に払ってもいいというんですね。
だから韓国の研究者は、米国産は韓国産ではなく豪州産と置き換わるというんです。かつて米国でBSEが起きたときに輸入を禁止したことで、米国産は豪州産に代わった。それから輸入が再開されても、元通りにはなっていないんですね。関税40%がなくなっても豪州産と置き換わるだけですよ。
――豚も同じですか?
ええ。韓国農村経済研究院のチェセギュン副院長の見立てでは、むしろ豚肉は牛肉より価格競争力があります。というのは、牛の場合は飼うのにかなり広い土地が必要ですが、豚の場合は結構詰め込んでやるので、牛に比べると相対的に価格競争力が出てくるんです。研究院の推計を見ると、養豚の生産額は約5兆3000億ウォン(10年)です。これが米韓FTA発効後15年目の減少額は2100億ウォンなので、4%減ですね。韓国では豚肉の生産も増加傾向にあり、予測では2022年には10年から18・7%増えて6兆3000億ウォンになります。だから、豚肉のほうが牛肉よりも壊滅という言葉からは一層遠くにあるといえるでしょうね。
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高安雄一 タカヤスユウイチ
大東文化大学
経済学部社会経済学科教授
1966年生まれ。90年に一橋大学商学部を卒業後、経済企画庁入庁。99年に外務省在韓国大使館二等書記官、2000年に同一等書記官などを経て、10年から大東文化大学経済学部准教授、13年教授。著書に『TPPの正しい議論にかかせない 米韓FTAの真実』のほか、『韓国の構造改革』『隣りの国の真実 韓国・北朝鮮篇』がある。韓国農業に関する論文も多数。
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