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岡本信一の科学する農業

数値管理の指標をつくる考え方(3)




直接測定できる作物の糖度が
天候や施肥の影響を反映する


さて、気象条件を詳細に測定しても、土壌の化学性を調べても収量や品質は分からないとすると、いったい気象の影響や施肥の影響を何から知ることができるのだろうか。気象条件にしても、施肥にしても個々の圃場の作物に影響を与えている間接的な条件に過ぎない。作物の栄養状態を調べる方がより直接的かつ簡単に気象や施肥の作物に対する影響をとらえられると見当が付く。
多くの農産物の収穫物は主に炭水化物である。炭水化物は植物の光合成(炭酸同化作用)によって作られるので、光合成産物が多ければ同化産物である炭水化物は増える。この関係から作物の光合成同化産物である糖の量は、いかに光合成が行なわれたのかという総合的な結果をも示す。作物体内の糖度を測定することで結果的に気象条件や土壌の物理性などからの影響をまとめて把握できるわけだ。数値管理に作物体内の糖度を加えれば、天候や施肥の影響を反映したより正確なシミュレーションを可能にする。
なお、糖度は栄養生長期に低く推移し、生殖生長期になるにしたがって高くなる。以前の連載の中で述べた炭素(C)と窒素(N)の栄養バランスは、栄養生長期に「C<N」であり、生殖生長期に「C>N」と変化する。天候が悪くて光合成ができず、糖度が少なくても、作物体内の窒素が少なければバランスはとれる。天候はコントロールできないが、施肥で窒素量を変えることによりバランスは調整できる。露地栽培では、作物を植えた後は防除のほか、追肥による養分調整しかできない。日本のように雨の多い国では追肥による養分調整が向いているといえる。
前回までに説明してきた土壌の物理性と株間の影響に施肥や天候状況を加味して、栽培の大きな要因をこれで3つ把握したことになる。前回書いたように栽培要因をこれ以上増やしたとしても、さして精度の向上を図ることはできない。収量や品質を定量的に把握するためにはこの3項目で十分なのである。ここからはどのように現場で応用していくのかという問題である。


重要な栽培要因を絞って
数値的な根拠を把握する


このように3つの要因からシミュレートすると、前回までの連載でジャガイモの大きさをそろえるという目的に対して、理論的には天候や施肥の影響を加味しながら、最適な株間を選定できるということになる。ただし、数値を利用して株間を決めるためには、多量のデータによる複雑な要因分析から導き出す必要がある。初めに定量的に把握してしまえば、いつでもどんな場所でも利用でき、生産量が膨大で圃場数が多いほど有効であろう。

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