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紀平真理子のオランダ通信

紀平真理子のオランダ通信

本誌ではたびたびオランダという国を取り上げ、農業視察ツアーも行なってきた。九州並みの面積ながら世界2位の農産物輸出国であり、トマトをはじめ、農産物の収量が高いことでも知られる先進国農業の象徴ともいえる存在である。そのオランダに滞在するうち、同国の農業に魅了された紀平真理子さんが日本人の視点でオランダ人とオランダ農業の実像を描く。
オランダの食卓は決して豊かではない。ではなぜ、食にこだわらないオランダで農業ビジネスが成功したのだろうか?
オランダは、「食にこだわることは卑しい」とされているプロテスタント信仰のため、温かい食事は1日に1回のみ。基本的には朝食も昼食もチーズとハムのサンドイッチのみだ。よく電車や自転車に乗りながらサンドイッチを食べているオランダ人を見かける。夕食は肉、ジャガイモと野菜で、同じものを毎日食べる人もいる。また、新たな味付けや食べたことがない食材を拒否するオランダ人も少なくない。以前、オランダの家庭料理を作ってもらったことがあるが、肉とバターの多さに驚きを隠せなかった。それに加えて、現在は女性の社会進出が進み、家庭料理がさらに簡素化している。「おふくろの味はAH(オランダ最大手のスーパーマーケット)の味」と揶揄している友人もいるほどだ。
先日、オランダ人から「農業に携わりたいなら、交渉力と語学力を鍛えて人脈を作りなさい」というアドバイスを受けた。さらに、「オランダ式農業では契約締結のための交渉が大切。そこが日本人の弱みでしょ」と彼女はすべてを見透かしているように微笑んだ。東インド会社時代から続くオランダ人の商人魂を侮ってはいけない。できれば敵に回したくない相手である。現代では商人魂のほか、独創的なIT技術、高い情報収集力と新しいものをすぐに取り入れるフットワークの軽さから農業はもちろんのこと、建築デザインやロボット工学などさまざまな分野で世界をリードしている。

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