記事閲覧
叶 そうですよね。いずれにしても水田の使い方、表作だろうが裏作だろうが有効に使っていくことが大切です。耕作放棄地は駄目ですよ。条件が悪い場所ばかりなので、産業としては不適格です。政治家は自分たちの関心を買うために耕作放棄地を解消する話をしますが、そんなことより優良農地である水田を有効に使っていくべきです。
昆 無理やり開墾した場所が残っているんですよね。
叶 その通りで、農民が使いたくないから放棄地になっているだけですよ。誰も借りたくないわけね。そんな場所は山や池に戻せばいいわけです。地目変更すれば放棄地じゃなくなるわけだ。これは実は現場の農家の人達の発想です。畑になっているから耕作放棄地であって、それを林にすればいい。肝心なのは水田をどう使っていくかですね。一番の優良農地(水田裏作)を遊ばせておく手はない。
昆 そして、イノベーションしようと挑戦する人たちにお金を使ってもらうことですね。
叶 そうですね。酪農家の力量の差は大きいけれど、経営力が低くてもつぶれずに残っているのは、今の乳価で飯が食えるからですよ。だから乳価を少し下げたほうがよいかもしれないですね。
昆 高すぎるんですよね。
叶 そう。ただ、今は餌代が高くなったから、利潤が圧縮されてくる。ある意味ではいい機会なのかな、と。この方が危機感からイノベーションの促進になる。
昆 いまの畜産利権って滅茶苦茶じゃないですか。たとえば餌が高くなったらその分を補填してくれるわけですから。畜産農家の読者が話していたんですが、牛を飼っていて破綻する人間って、よっぽど経営能力がないんですって。どうしたって破綻できないようになっているんですよ。それから彼は飼育頭数が100頭弱ぐらいなんですが、それだと家畜共済は100万円ほど。で、彼は共済を止めたんです。いい獣医さんがいれば、費用は100万円以下で済むから。共済があるためにね、農家はどんどん獣医を使っちゃっている。それで合理的な経営判断をしなくなる。酪農の乳価の問題と共済がね、畜産農家を無能にしているんです。
叶 だから人材革命が起きない。
昆 そうですね。
叶 ドル高円安になって経営を改善しなくてはいけなくなっていますよ。
昆 こういうショックが起きないと変化が起きないんでしょうね。むしろ円安というかドル高が、本当の危機を感じさせるんじゃないかと思います。
叶 でも、そうした気持ちを餌代の補てんによって政治家がまた壊そうとしていてね。
会員の方はここからログイン
叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
編集長インタビュー
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)