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JFは提言のなかで外国産米輸入枠増枠要請とは別にコメ政策に関して重要な点に触れている。現在のコメ政策は「主食用米、加工用、米粉用、備蓄用、飼料用など、コメの用途ごとに生産目標数量と交付金等を設定して数量と価格の安定を図る仕組みであり、それが用途間の需給の弾力性を低下させているのではないか」と言う指摘を行っている。
まさにこのことが歪(ゆが)んだ政策と言え、歪んだコメの生産流通を生んでいる。コメの生産調整を実施しながら「主食用ではない」と言う理由づけで加工用米や米粉用、飼料用米をコメの転作作物であるとして多額の助成金を支給して生産振興している。まさに詭弁で、ウルグアイラウンドの交渉合意の際、ミニマムアクセス受入では「主食用には影響を与えない」と言う理由で加工用に売却するとして70万tを毎年輸入することにしたのと同じ詭弁でだ。
いったいコメの需要を主食用と加工用に分ける意味がどこにあるのか?本当に区分けできるのか?
分かりやすい例を紹介したい。それは清酒原料米で、國酒を標ぼうする清酒業界は建前として国産米使用を前提としている。面白いことに清酒業界は生産調整枠外で生産された加工用米を使用している。農水省は清酒原料に関しては生産調整枠内のコメと言う認定をしており、焼酎業界には不足した加工用米の代替原料米として政府備蓄米を売却したが、清酒向けには認めなかった。要するに農水省自信が生産調整枠内のコメ(主食用)なのかその外のコメなのか曖昧なのだ。こうした詭弁を呈してコメ政策を組み立てているのだから生産や流通がおかしくなるのは当たり前である。
日経新聞が7月3日号朝刊1面トップでTPPに絡んで「加工米関税下げ容認」と大々的に報じたが、この記事で読み取れるのは、ウルグアイラウンド交渉妥結時と同じ「主食用には影響を与えない」という論法と全く同じである。
もしこの通りの筋書きでTPP交渉が妥結した場合、稲作生産者にとっては、全てのコメが関税化された場合より悪い結果になり、まさに取り返しのつかない事態を招く。なぜなら加工米の範疇を農水省が認めるかによってその分野の国産米需要が奪われる。冷凍米飯やパックご飯は全体の消費が落ち込んでいる中で伸びている分野であり、これが外国産米に置き換わればその分得意先を失うということを意味する。
稲作生産者にとって最も重要なことは自ら生産したコメをどこに売るかであり、国からいかにして助成金をもらうかではない。その意志無くしてコメの産業化などあり得ない。
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