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(2)葉と花穂の活用
日本の大麻取締法ではマリファナ成分の規制を法的には定めておらず、葉と花穂という植物の部位によって利用を規している。海外では、マリファナ成分を含まない繊維用と食用の麻品種は茎以外にも葉をハーブ茶や動物用の餌に、花穂を香料やキャンディ、ビールなどの商品に活用している(下のヘンプマルシェ参照)。薬用の品種は花穂と葉を使い、ガン疼痛や偏頭痛の鎮痛剤、吐き気抑えや神経性疾患など医療分野で利用している。
EU各国ではマリファナ成分のTHCが0・2%未満の品種ならば、すべての植物部位を活用できる。同じ植物で国によって使える部位が異なるのは全くもって科学的な合理性がない。特に日本のように少ない面積でより収益を上げるには、活用できない部位があるのはかなり致命的なことで、花穂や葉の活用は必須である。
(3)栽培免許権限の市町村長への委譲
大麻取扱者免許は都道府県知事の権限である。現在の免許制度は、都道府県の薬務課が知事を飛び越えて厚生労働省の顔色を伺うような運営をしている。制度上は地方分権になっているが、実態は形骸化しているといえる。行政の「難しい」「できない」という姿勢そのものが特区の法的精神に反する行為である。麻で地域活性化をしようとやる気のある地方自治体にとって、国の後ろ向きな姿勢は地元の農家や民間事業者の自由な営業活動を阻害するものでしかない。栽培面積や栽培者を広げるには、特区制度による都道府県知事から市町村長に免許の権限を委譲するという規制緩和が必要なのである。
麻に限らず、特区制度はあらゆる分野で国の全国一律な規制が民間の活力を阻害してきたという反省から生まれたものである。先行き不透明な日本の地域を活性化する社会実験という意味を持つ。最初の栽培者は特別に免許が下りたが、2番目の申請者には免許が下りないという事態を回避するためにも、栽培特区を取って社会実験を行なうことは大いに価値がある取り組みであろう。
麻の栽培の復活にあたって、将来的な総合特区の申請を見据えて自治体と友好な関係を築き上げることも栽培者免許取得にとって大変有効だと思われる。さらに麻栽培が復活した地域では、麻農家と自治体が共同して特区制度を上手に活用して、日本の麻の産業化に向けて果敢に挑戦していただきたい。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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