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【自分の畑は自分で診断する】
これなら分かる「土と肥料」の実践講座肥料その1
- 農業コンサルタント 関祐二
- 第15回 1996年02月01日
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リクルート事件はスーパーコンピュータをめぐる贈収賄事件であったことは記憶に新しい。現代情報化社会に起こった事柄としては不思議な話ではなかったのかも知れません。
戦後間もない昭和23年には、大蔵省主計局を巻き込んでの大疑獄事件である昭和電工事件というものがありました。これは硫安製造のための戦後復興基金をめぐる贈収賄事件です。当時は、現在とは比較できないほど化学肥料は貴重品だったのです。
現在の私たちは、いつでもどこでも硫安を20kgの袋入りで600円ぐらいで買えます。戦後急成長した重化学工業は、その副産物として今も硫安を有り余るほど製造しています。
しかし同時に、日本国内に産出する肥料原料の乏しさが世界有数であることには変わりありません。リン酸肥料、カリ肥料は100%海外依存。チッソ肥料にしても原油を輸入しなければ作れません。国内で満足に調達できるものは石灰くらいのものです。
あまりにも低レベルな
そんなお家の事情とは別に、今の日本の肥料の使い方、肥料の効かせ方はたいへん低レベルなものといえます。もちろん精度の高い施肥をしている人も多くいますし、作物による傾向もあります。たとえば果樹園芸などは健全な施肥がされています。与えすぎると花ぶるいなど生産に直結する不都合が生じるからです。水稲でも倒伏しやすい品種は、施肥量や時期に気を使っているいるはずです。
それに反して、与え過ぎてもさしたる害の出ない作物は、事情がかなり違います。人の習慣とは恐ろしいもので、いつの間にか”与えて取る”という意識になっているのです。受け皿としての大切な土があって、そのしくみの中に作物を育てる機能があり、その役割の一助となっているのが肥料であるということを、完全に忘れてしまっているのです。
日本の化学工業技術にはたいへんなものがあります。高度化成肥料をはじめ、これほど多種多様の肥料が販売されている国はありません。それを販売する肥料商や農協組織も、悪気はないにせよ、肥料を与えてモノを取るという思想の固まりなのです。とにかく相談されればマニュアル化された施肥設計を与える。流通も同一品目をまとめて発注するほうが都合がいいから、とにかくそうする傾向がある。都合の悪いのは圃場の上と作物だけですが、この連中は口がきけません。そして重くかさばる商品である肥料は、同じひと袋であればマージンの多いほうを薦めるのが肥料小売業の自然の姿でしょう。
私はこれらの現象を“悪”と考えるのではなく、土と肥料の知識が普及していないことこそが問題だと考えます。
農業者も土と肥料のメカニズムを理解しないまま、肥料の選択と使い方を我流で決めていくのです。さもよく効きそうなデザインの袋に入っていれば、つい心が傾きます。こんな迷い心に必要な羅針盤は、科学しかありません。
約400年前まで、人々は、地球は平らなものと思い、太陽がその周りを回っていると信じていました。しかしそんな時代にあっても、科学は地球が丸い球で、自転しながら太陽の周匝を回っていることを突き止めました。偉大です。ところがこの主張は、当時、世の中に受け入れられることはなく、地動説を唱えるものは火あぶりの刑にさえ処せられたのです。地球儀を眺めるたび、このことを考えさせられます。
戦後間もない昭和23年には、大蔵省主計局を巻き込んでの大疑獄事件である昭和電工事件というものがありました。これは硫安製造のための戦後復興基金をめぐる贈収賄事件です。当時は、現在とは比較できないほど化学肥料は貴重品だったのです。
現在の私たちは、いつでもどこでも硫安を20kgの袋入りで600円ぐらいで買えます。戦後急成長した重化学工業は、その副産物として今も硫安を有り余るほど製造しています。
しかし同時に、日本国内に産出する肥料原料の乏しさが世界有数であることには変わりありません。リン酸肥料、カリ肥料は100%海外依存。チッソ肥料にしても原油を輸入しなければ作れません。国内で満足に調達できるものは石灰くらいのものです。
あまりにも低レベルな
日本の肥料の使い方
そんなお家の事情とは別に、今の日本の肥料の使い方、肥料の効かせ方はたいへん低レベルなものといえます。もちろん精度の高い施肥をしている人も多くいますし、作物による傾向もあります。たとえば果樹園芸などは健全な施肥がされています。与えすぎると花ぶるいなど生産に直結する不都合が生じるからです。水稲でも倒伏しやすい品種は、施肥量や時期に気を使っているいるはずです。
それに反して、与え過ぎてもさしたる害の出ない作物は、事情がかなり違います。人の習慣とは恐ろしいもので、いつの間にか”与えて取る”という意識になっているのです。受け皿としての大切な土があって、そのしくみの中に作物を育てる機能があり、その役割の一助となっているのが肥料であるということを、完全に忘れてしまっているのです。
日本の化学工業技術にはたいへんなものがあります。高度化成肥料をはじめ、これほど多種多様の肥料が販売されている国はありません。それを販売する肥料商や農協組織も、悪気はないにせよ、肥料を与えてモノを取るという思想の固まりなのです。とにかく相談されればマニュアル化された施肥設計を与える。流通も同一品目をまとめて発注するほうが都合がいいから、とにかくそうする傾向がある。都合の悪いのは圃場の上と作物だけですが、この連中は口がきけません。そして重くかさばる商品である肥料は、同じひと袋であればマージンの多いほうを薦めるのが肥料小売業の自然の姿でしょう。
私はこれらの現象を“悪”と考えるのではなく、土と肥料の知識が普及していないことこそが問題だと考えます。
農業者も土と肥料のメカニズムを理解しないまま、肥料の選択と使い方を我流で決めていくのです。さもよく効きそうなデザインの袋に入っていれば、つい心が傾きます。こんな迷い心に必要な羅針盤は、科学しかありません。
約400年前まで、人々は、地球は平らなものと思い、太陽がその周りを回っていると信じていました。しかしそんな時代にあっても、科学は地球が丸い球で、自転しながら太陽の周匝を回っていることを突き止めました。偉大です。ところがこの主張は、当時、世の中に受け入れられることはなく、地動説を唱えるものは火あぶりの刑にさえ処せられたのです。地球儀を眺めるたび、このことを考えさせられます。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
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