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自分の畑は自分で診断する

これなら分かる「土と肥料」の実践講座肥料その1

 さてこれまで土の科学を一通り学んできて、そのメカニズムを頭に入れたことを前提に、施肥法や、また肥料とは何かを改めて考えていきたいと思います。


すべてがそろわなくては 最高収量には達しない


 まず最高収量を達成するとはどういうことかを考えてください。それは作物生産を取り巻くさまざまな因子を、最高の条件で解決していることなのです。これをわかりやすく説明するため「ドベネックの最少樽」というものが提唱されています。(図1)これの意味は、樽の最も低い側板の位置で、最高収量が決まってしまうというものです。作物が要求する各種成分のうち、たとえその中の一つでも欠乏すると、その欠乏に収量が制限されてしまうということです。肥料分がすべて満足のいくものであっても、他の因子、すなわち光、水、温度、もちろん土壌の状態などの条件が満足なものでなければ、収量は制限されます。

 この見方は、農事改良はもちろんですが、経営そのものを検討する上でもわかりやすい手法だと思います。作物別の施肥量の基準など、どんな指導書にも書いてあります。しかし、それを施す時期や微妙なタイミングなどまでは書いていません。また、受け皿としての土とどのように関連づけていくのかなどなど……。肥料だけに注目し、どんな肥料が販売されていて、どのようにいいのか、何に注意するべきなのかなど、土のことを知らないでは絶対に理解できるものではありません。それゆえに、施肥作業には奥深いものがあるのです。

 このドベネックの最少樽の例で示される施肥法の原理を最少律と呼び、第一の原理と考えてよいでしょう。

 第二の原理と呼べるものに、報酬漸減の法則というものがあります。これは作物に養分を与える量と、その収量の関係は、S字曲線となるというものです。こんなことは、農業をしている人に言わせれば当然かもしれませんが、この法則はドイツの圃場試験において、1852年から1907年までの50年間を費やした結果得られたものです。ヨーロッパの農業の強さ、あるいは施肥法の探究は、こんな長期試験に取り組む姿勢からもうかがえます。

 さて、次に肥料の分類についてですが、これは表1に示すようなものを心得ておけばよいでしょう。

 農業者が肥料を分類する第一のポイントは、まず普通肥料か特殊肥料かということでしょう。普通肥料は、肥料取締法によって、その成分内容を何が何パーセントというように保証しているものです。それに対して、特殊肥料は保証成分について表示する必要はなく、製造業者が、その道府県知事宛に届け出申請をして、許認可を受ければ販売できるものです。肥料取締法は、明治初年、不正肥料の被害から農家を守る目的で制定され、その後何回もの改正を経たものです。現在のものは諸外国のそれに較べてたいへん厳しい内容となっています。

 普通肥料は銘柄ごとに登録し、保証票を添付します。そして含有すべき主成分の最少量(%)を明記するとともに、検査では、そのほかに有害物質、粉末度、異物混入についてチエックを受けます。また工場、圃場、店舗、倉庫の立ち入り検査により試料の収去も行なわれています。このように、わが国は肥料そのものの製造法、品質管理は最高水準にあるとも言えます。

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