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特集

肥料減で品質安定&コストダウンを狙う 基肥一発型から追肥主義の施肥体系へ


次に下から2段目の「多量要素のコントロール」を見ていく。窒素、リン酸、カリといった多量要素の過不足は致命的である。日本では多くの場合、過剰であるが、一部では不足している場合もあるようだ。
多量要素の過不足は、決定的に問題である。上段にある作物の生育段階との兼ね合いも大きいために、作物の生育ステージによる見極めも重要になる。作物の生育段階に応じた作物体内の栄養バランスも同じように重要である。
このあたりの認識がまだ多くの方に理解いただけていないように思う。施肥を行なっても、窒素以外の成分は作物の外観からの観察だけでは分からないということに起因している。施肥するか否か、どのくらいの量を施肥するのか、どのように判断しているのかというと、多くの方が窒素の効果のみで判断しているだろう。それほど窒素は施肥後に目で見て確認しやすい養分なのである。施肥によって草姿さえ変わってしまうこともある。多くの窒素過剰の作物においては、葉が大きく、厚みがない。ペラペラの葉を見ても、多くの方がそれ以外の姿を見たことがないため、葉が薄いということにも気づかない。ましてや施肥を大きく変えるとどのようになるのかを知らないのである。
一例を挙げよう。サツマイモはむしろ痩せている土地で作ることが出来たから重宝した作物である。ところが、本来肥料をほとんど必要としない作物にも、肥料を与えて、過剰に繁茂しないと満足しない傾向がある。率直に言ってイモ類の場合には品種にもよるが、地表部が繁茂し過ぎると収穫物に養分が蓄積しにくくなる。収量が上がりにくく、品質も低下する。多くの方が参考にしている慣行施肥は、天候が良ければ、収量が上がるという施肥管理と言えるだろう。このような施肥管理をしていると予想外の日照不足や多雨、高温、干ばつなどに見舞われると、天候の悪化以上の減収を招いてしまう。多くの作物について、全国的に施肥過剰の圃場が多いため、適正施肥を行なった場合の作物の状態を把握できていないのである。
多量要素のなかで、リン酸については一言付け加えておく。リン酸は、土壌に吸着されているので、根毛と呼ばれる細かな根の張りが悪いと吸収することができない。この根毛は酸素を多く必要とするので、土壌の物理性が悪い土壌など酸素が少ないと、発達しない。リン酸の吸収を助けるためには施肥よりも、根の張りを良くすることが重要である。
さらに作物というのは、自ら必要な栄養を選択的に吸収できる能力を持っている。それも根毛を含めた根の張りが悪ければ、選択吸収を行なうことができない。つまり、土壌の状態がよく根の張りが良ければ、施肥にさほど気を遣う必要がなくなるのである。基本的な物理性の改善があってこその施肥であることを肝に銘じていただきたい。

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