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【日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識】
ヨーロッパの大規模栽培の方法
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第9回 2013年08月21日
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ヨーロッパの大規模栽培の方法(1)
15~17世紀の中世ヨーロッパ、大航海時代の船には1隻当たり60tも大麻草(以下、麻)が使用されたという。帆船の帆布やロープ、船員服に使われたのはもちろんのこと、航海日誌に麻紙を使い、夜になると麻の実油で灯りを確保していた。実はマゼランの世界一周も麻なしでは語れないのである。しかし、スペインやポルトガル、イギリス、フランスなどが世界各地で植民地を拡大すると、麻より安いサイザル麻やジュート麻がアフリカやアジアから供給されて一気に市場縮小となった。
第二次世界大戦後は、旧・ソ連の影響下にあった東ヨーロッパ(ポーランド、ハンガリー、ルーマニアなど)で栽培が続けられていたが、米国の影響下にあった西ヨーロッパの主要国のドイツ、イギリス、オランダ、オーストリアなどでは、麻栽培が一時的に禁止された。例外的にフランスは、昔から紙パルプ用に麻を栽培していたために一度も規制されていない。
1990年代に環境問題や健康問題を背景とした麻の見直しが広がり、93年にイギリス、94年にオランダ、96年にドイツとオーストリアにおいて薬理成分THCが0.3%未満の産業用品種の麻に限定して栽培が解禁された。栽培の解禁が実現した背景には、ヨーロッパ農業共通政策(CAP)による補助金の枠組みの存在がある。現在のEUにおける麻は、EU規則の農業分野の亜麻および麻」という項目に位置づけられている。規則とはEUの法体系において加盟国の法令を統一するために制定され、その国々に直接の効力を持ち、すべての国内法より優先される。加盟国での麻栽培はヨーロッパ共同市場機構(CMO)の執行規則に基づく補助金の対象になる。
この枠組みの内容は、70年に規則が発効されてから今日まで幾多の変遷がある。例えば、01年からはTHC基準を0.3%から0.2%と厳しくし、品種リストとTHC測定手順書を発行している。この制度における補助金は08年には麻の藁束1t当たり90ユーロだった。現在はEU財政の見直しにより麻への補助金はない。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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