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岡本信一の科学する農業

分かりやすさの落とし穴


このように数値的な指標があることによって、初めて多くの方が共有する事象となり得るのである。
農業分野にはこのような指標や栽培基準が数多くある。土壌が変われば作物の出来は違うというのもその一つだろう。これまでは数値指標が把握できていなかったため、土耕栽培、つまり露地栽培や施設栽培においては数値的な管理ができないという思い込みも当然のことだった。それも、これまでの連載で述べてきたように、土耕の場合でも以前に比べればデータ収集と解析が進み、はるかに明確な指標を出せるようになってきたのが現状である。

条件が複雑なときほど数値データが頼りになる

さて、皆さんも栽培の現場では、資材の良し悪しを効果があったか、なかったのか、という現象のみで判断してこられたのではないだろうか。これこそが「分かりやすさ」の究極事例といえよう。どのような条件であればどの程度の効果があり、どのような条件だと効果が小さくなるかを語るべきなのだが、多くの場合には、条件が多すぎて、それを語ることを難しくさせてきたのだ。
まず、天候条件があり、次に土壌条件があり、さらに個人の土壌管理も違う。このように多くの要因があるなかで、資材の良し悪しを判断するのは非常に難しい。もちろん、資材の良し悪しは、同じ圃場内で比較試験をすることでその優劣を判断すればいいのだが、別の条件が重なると全く効果がないということも頻繁に発生する。
これまで述べてきたように、定量的に説明できるということは、原因と結果の因果関係を明確にできているということを表している。実際に導入したい圃場である程度の土壌条件を調べることによってその資材が効果を発揮するか否かの判断も科学的にできるということを意味する。
これまでは、要因が多すぎて分からないから、複雑過ぎて理解できないから、経験や勘に頼ったほうが妥当である、といった判断をされる場面が多かったのではないだろうか。実際には、むしろ数値にするからこそ分かりやすくなる。そこがまさに落とし穴である。
数値にするということは、ごまかしが効かない。きちんと定量的な結果を得るためにはきちんとデータを収集する必要がある。これからはデータを集めることによりこれまで分からなかった多くのことに対して理解が進むようになる。実際に作物を作ってみなければ分からない、と言う時代はすでに終わりつつあるのである。

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