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特集

農業、いまどきの女たちが考えること


「私には小さい頃から、農業はくたびれた服を着ながら重労働をしているというイメージがあったんです。それだと若い人たちが農業をしたいと思わないじゃないですか。これでも一応は女なので(笑)、作業着に凝りたいんです。周りから「しんどいやろ、えらいやろ」って言われるよりは、「かっこいい職業やな」と言われたい。私が農業をやろうとした時って、外見にこだわる女性がいはるって知らなかったんで、じゃあ自分でやってみて、周りのイメージをちょっとでも変えたいなって思ったんです」

農業は“使命”

外見にこだわるというと軟派な印象を与えるかもしれないが、菜穂は農業を仕事とすることを早くから両親に宣言するほど、しっかりしている。母親の裕子(51)によれば、それは中学時代だったという。なにしろ菜穂にとって農業をすることは「使命だった」からだ。
祖父も父親も大阪生まれ。農業をするためこの地に移ってきた。菜穂には妹1人だけで男兄弟はいない。「大阪からやってきて、ここまで農地を広げるのは相当な苦労だったんやろうな、と思うんです。そこに受け継いできたものの大きさを感じるんです。だから私にとって農業をすることは、運命というより使命なんですね」
“使命”という重みのある言葉を使う菜穂を、母親は心配する。
「重荷に感じ過ぎて、やめてしまわなければいいけど」
でも、今の菜穂にはそんな気持ちはさらさらないようだ。
「農業で一生行こうと思っています」

女性が農業をするには「いい時代」

父の唯幸は女性が農業をすることをどうみているのだろうか。
「20年前なら女性が農業するには明らかにハンディがあった。当時は生産重視やったんですよ、農業はどうしても力のある男の仕事だった。たとえば北海道の勝部征矢さんの奥さんは男の数倍仕事ができます。7、8年前かな、僕、聞いたことあるんですよ。「失礼かもしれませんが、女性としてハンディを感じられたことがありますか。僕は感じていないように思うんですけど」って。そうしたら「私の時代はハンディがありました」と言われました。あれだけ機械を乗りこなし、事務作業ができる方が言うんだからね」
でも、時代は変わった。女性の力は不可欠と感じている。
「女性は出産して、少なくとも5年間は子どもの面倒をみなければいけない。そうしたハンディはあるから、周りはサポートせなあかんと思うんです。ただ、出産や子育てって女性の経営者にとっては大切な経験。とくに、いまはお客さんを巻き込む農業をしないと生き残っていけないでしょ。それにコメを買ってくれるのはお母さんたち。彼女たちの気持ちが分かる女性がいることが、結果的には経営にプラスに働きますよ。TPPにしてもそうやけど、日本の農業は消費者を味方に付けていないから弱い。消費者にとってみれば、オッサンよりは女性の方がいいでしょ(笑)。女性のパワーを活かさないと、農業界の今後はないと思う」

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