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須藤さんはそれでは満足しなかった。温室面積がそのままパネルの面積になる方法を模索した。パネルとパネルの間にはどうしても10cm程度の空間を作る必要がある。パネルを完全に寄せてしまうと作物の茎が弱くなり自立しなくなるからだ。また、水田などと同じで水耕栽培の場合でもパネルの端ほど収量が上がるのだそうだ。
そして、ついに昨年その方法を開発・実用化した。その温室を見ると、人が移動する通路がどこにも無く、文字どおり全面に作物が植わっている。平常の状態を見たら「どうやって作業するのだ」と首をかしげてしまう光景だ。
温室内に隙間なく並べられたパネルの内、一番端のパネルだけは上下にも移動できるようにし、その列を持ち上げたスペースにパネルを移動させる方法だ。これで、人が作業する時だけパネルの間に通路ができる仕組だ。これが昨年パテント申請したばかりの最新システムで、須藤さんの農園の一部と新しい法人経営の温室に利用が始まったところだ。これで、限りなく100%に近い温室利用技術を開発したわけであるが、須藤さんは「これができたら120%、130%というふうに可能性を考えちゃうんだよね」と笑う。
「これができたらいい」「ここをこうすればいい」とは誰でもいう。でも、どれだけの人が自ら研究し、開発費をかけて改良に取り組むだろうか。
とりあえず儲からないと何もできないし、利益はあげなければならない。しかし、儲けることが須藤さんの目的なのだろうか。確かに、経営者にとって利益を上げることは責任ではあっても、それは目的というより自分自身の人生という作品を完成させるための手段なのではないだろうか。
洒落た事務所と大規模なガラス温室が 2.5haの丘陵地に点在する須藤さんの農園には電信柱が1本も立っていない。電気、電話、各温室の連絡や集中管理の配線など、全てを地下に埋設しているのだ。事務所や温室の廻りは花畑になっていて、ちょっとした公園を思わせる景観だ。電信柱を無くして農園の美観を高めるために須藤さんは10年以上前に約800万円も掛けた。それは温室経営の利益を上げるのに必要な経費というより、須藤さんのイメージした農園の景観を作るための費用だったのではないか。それはかつて、崖のような水の無い畑で仕事をしてきた須藤さんが夢見たものなのだろう。もちろんパートで働く人が、どこで働いているということを自慢できるような雰囲気のある場所にしたかったし、してあげたかった。ひとから見たらつまらないことと思われるかもしれない。須藤さんはいつも「そこまでの施設はいらないのではないか」と人からは言われ続けたようだ。しかし、その時の貧弱な体には大き過ぎる器に見えても、いつの間にか自らがイメージした夢が、そして作った器が、人をその大きさに成長させるのである。
須藤さんは、レークファーム亀山に次いで販売専門の別会社を持ちハープ部門を独立させることを計画している。さらに、現在の農園を誰かにまかせ、すでに土地も購人した山梨県の高根町というところで次ぎの温室経営を考えている。日照が多く、積雪もほとんどなく、湿度の低さも温室をやるには最高の場所だ。富士山、八ヶ岳、南アルプス、秩父連山に囲まれた最高の景観もある。今、須藤さんは、そこに自分白身が楽しむためのハープの温室を作る「次ぎの夢」を拙き、「次ぎの器」を創ろうとしている。(昆吉則)
そして、ついに昨年その方法を開発・実用化した。その温室を見ると、人が移動する通路がどこにも無く、文字どおり全面に作物が植わっている。平常の状態を見たら「どうやって作業するのだ」と首をかしげてしまう光景だ。
温室内に隙間なく並べられたパネルの内、一番端のパネルだけは上下にも移動できるようにし、その列を持ち上げたスペースにパネルを移動させる方法だ。これで、人が作業する時だけパネルの間に通路ができる仕組だ。これが昨年パテント申請したばかりの最新システムで、須藤さんの農園の一部と新しい法人経営の温室に利用が始まったところだ。これで、限りなく100%に近い温室利用技術を開発したわけであるが、須藤さんは「これができたら120%、130%というふうに可能性を考えちゃうんだよね」と笑う。
「これができたらいい」「ここをこうすればいい」とは誰でもいう。でも、どれだけの人が自ら研究し、開発費をかけて改良に取り組むだろうか。
農園作りという人生の作品
とりあえず儲からないと何もできないし、利益はあげなければならない。しかし、儲けることが須藤さんの目的なのだろうか。確かに、経営者にとって利益を上げることは責任ではあっても、それは目的というより自分自身の人生という作品を完成させるための手段なのではないだろうか。
洒落た事務所と大規模なガラス温室が 2.5haの丘陵地に点在する須藤さんの農園には電信柱が1本も立っていない。電気、電話、各温室の連絡や集中管理の配線など、全てを地下に埋設しているのだ。事務所や温室の廻りは花畑になっていて、ちょっとした公園を思わせる景観だ。電信柱を無くして農園の美観を高めるために須藤さんは10年以上前に約800万円も掛けた。それは温室経営の利益を上げるのに必要な経費というより、須藤さんのイメージした農園の景観を作るための費用だったのではないか。それはかつて、崖のような水の無い畑で仕事をしてきた須藤さんが夢見たものなのだろう。もちろんパートで働く人が、どこで働いているということを自慢できるような雰囲気のある場所にしたかったし、してあげたかった。ひとから見たらつまらないことと思われるかもしれない。須藤さんはいつも「そこまでの施設はいらないのではないか」と人からは言われ続けたようだ。しかし、その時の貧弱な体には大き過ぎる器に見えても、いつの間にか自らがイメージした夢が、そして作った器が、人をその大きさに成長させるのである。
須藤さんは、レークファーム亀山に次いで販売専門の別会社を持ちハープ部門を独立させることを計画している。さらに、現在の農園を誰かにまかせ、すでに土地も購人した山梨県の高根町というところで次ぎの温室経営を考えている。日照が多く、積雪もほとんどなく、湿度の低さも温室をやるには最高の場所だ。富士山、八ヶ岳、南アルプス、秩父連山に囲まれた最高の景観もある。今、須藤さんは、そこに自分白身が楽しむためのハープの温室を作る「次ぎの夢」を拙き、「次ぎの器」を創ろうとしている。(昆吉則)
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須藤久雄
千葉県君津市
1947年、千葉県君津市生まれ。君津農林高校を卒業後東京青果での研修の後に就農。1966年に500坪から始まった水耕栽培は、今年中には2万坪までに成長。観光農園事業も盛況で、野菜の加工事業も手がけようとしている。
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