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シリーズ水田農業イノベーション

雪国のコメづくり技術を革新する(後編)乾田直播導入の効果と心得 水稲乾田直播の栽培の極意と狙い




乾田直播は規模拡大に欠かせない革新技術

最近、水田経営の規模を拡大したときに労働力が限られている場合は、小麦、大豆、飼料作物を選ぶ傾向が強い。選択の理由は戸別所得保障制度の品目で、10a当たりの投下労働時間が少ないからであろう。北海道の水田面積は 22万4000haで、うち水稲作付面積は11万5000ha、転作率は51・4%である。コメの需給調整が守られ、北海道米の需要が高まり、価格が高値に推移しているにも関わらず、移植水稲は敬遠される傾向だ。規模拡大が進むことで、コメの作付面積に限界を感じ、結果として需要があっても作れない。もったいない話である。

一方、水田地帯では担い手の不足から、農地は買い手市場である。規模拡大を指向する経営に水田取得のチャンスが多い。

図3に岩見沢地域で規模拡大を進めるA氏の7年間の経営面積、労働力、作物構成の推移を事例として示した。移植水稲は家族経営で田植機1台だと、25haが限界面積と言われるが、2008年に乾田乾籾直播を導入したA氏は、7年間で92haまで規模を拡大した。水稲と畑作の作付比率を同じにしながら、4人の家族労働力で経営を営んでいる。

岩見沢地域では2005年からの5年間で、30ha以上の経営が49戸も増加した(図4)。農業センサスから予測を立てると、2015年にはさらに規模拡大が進み、その数は210戸となる。地域全体では、2割の農家戸数で8000haの農地を担うことになる。これは岩見沢地域の半分の農地に相当し、ほとんどが水田である。

乾田直播の作業機は畑作物と共用できることから汎用性が高い。技術導入の新規投資は避けられないが、大規模経営では稼働面積が十分確保でき、10a当たりの機械費用の低減効果が大きい。乾田乾籾直播は家族労働が中心である水田経営の、規模拡大に貢献する革新技術と注目され期待される所以は、ここにある。

代かきがなく団粒構造の破壊が少ないこの技術の導入は、収穫後も圃場がよく乾燥することから田畑輪換を容易にする。小麦、大豆の連作が回避できることから、圃場の病害虫や雑草の増加を抑制してくれる。さらに、代かきで生じる作物残渣の浮遊がなく、レーキでのゴミ上げ作業(図5)がなくなり、農業者の重労働が軽減され、女性や高齢者に喜ばれている。

B氏は乾田乾籾直播を導入し、約30haの水田経営をしている。経営成果を数値化し、明日の経営に役立てるため、自ら統計調査と同じ手法を用いて部門別の経営分析を行なった。2010年の結果が表1である。 この結果から労働費を含めた全算入生産費は、全国平均、北海道平均を大きく下回る結果が得られた。無代掻き移植栽培で10a当たり2万1429円、乾田直播栽培に至っては7760円である。投下労働時間は10a当たり4・9時間と小麦の4・8時間と近似し、労働生産性は高い。ただ物材費は北海道平均と同等である。収量が移植と同等となりつつある今、さらなる技術革新による低コスト化が、乾田乾籾直播の今日的課題と言えるだろう。

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