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日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識

ヨーロッパの大規模栽培の方法(2)

本連載では、大麻草を研究テーマに掲げて博士号を取得した赤星栄志氏が、科学的な視点でこの植物の正しい知識を解説し、国内での栽培、関連産業の可能性を伝える。ヨーロッパの事例紹介の2回目は、収穫後の一次加工ラインの大型設備について取り上げる。70~80億円規模の麻市場を担う現場での作業はどのように行なわれているのか。


第10回 ヨーロッパの大規模栽培の方法(2)

ヨーロッパで行なわれている大規模栽培について、前回は栽培から収穫までの流れを説明した。今回は、機械化された大麻草(以下、麻)の一次加工ラインについて紹介する。


一次加工ラインの大型設備

収穫後に運搬しやすいようにまとめられた麻のわら束は、一次加工場へ運ばれる。ブロック状またはベール状の麻茎は、靭皮部の繊維と木質部のオガラが混合した状態である。これを繊維とオガラに分離し、不織布や建築材、動物用敷料、製紙原料、プラスチック原料などの最終用途(完成品)に要求される品質を満たすために、一次加工場では次のような工程が必要となる(図1、図2)。


●前処理工程
投入する材料の品質によるが、前処理ラインへの麻茎投入量は1時間当たり最大2tである。

1)給装テーブル
まずここに原料を投入する。

2)ベール開繊機
長方形のブロック、円形のベールの両方を扱える。石を分離するための格子がある。

3)コンベアベルト
結合金属探知機により自動的に金属を除去する(図3)。

4)ブレーカー(砕茎機)
オガラと繊維部を分離する。繊維構造を損なうことなく、オガラを何回もつぶすはたらきをする。

5)ペダル・シェーカー
分離したオガラの除去を行なう。


●クリーニング工程
6)クリーナー(除塵機)
つぶされた木質部(破片)を空気搬送によって取り除く。

7)コム・シェーカー
残った木質部を切り離す。


6)と7)の装置の設置数は、要求される繊維の品質やクリーニングの程度によって変更する。また、取り除かれた木質部は、別のクリーニングラインへ空気搬送される(図4)。

●繊維の仕上工程
8)オープナー
軟らかい繊維のかたまり(繊維房)にする(図5)。

9)ファイン・オープナー
繊維のかたまりをほぐして、生産性を高めるための装置

10)コットン化
さらに綿状にするための装置


繊維の品質と長さは、8)~10)の工程によって、完成品の要求に合わせることができる。

この一次加工ラインは、全長35~45mとなり、設備費用は約2億5000万~3億円となる。1つのラインで300~1000haの栽培規模に対応できる。

麻は一次加工での廃棄物がゼロという最大の特徴を持つ(図6)。一次加工後の半製品の現地での出荷単価を日本円に直すと、1t当たり靭皮繊維は約5~15万円、オガラは3万5000円、麻くずと搾り粕は1万円、麻実油は100万円で、麻の一次加工場の売上は2憶6350万円~3憶6350万円となる。麻繊維専門の一次加工ラインを開発する会社は世界的に見てもそれほど多くなく、昔ながらの繊維機械メーカーが担っている(表1)。

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