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【日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識】
ヨーロッパの大規模栽培の方法(2)
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第10回 2013年09月24日
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拡大するEUの麻市場
ヨーロッパでは、1993年に現代的な麻栽培がイギリスで始まり、2000年にEIHA(ヨーロパ産業用大麻協会)という組織が発足している。この組織は一次加工を行なう会社が中心となって構成され、正会員は10団体、準会員は72の団体と会社(31カ国)に及ぶ。事務局をドイツのノバ研究所に設け、毎年ドイツでEIHA国際会議が開催されている。
ちなみに、正会員になるには800ha以上の栽培規模という条件がある。2010年度で日本全体では麻の作付面積は5haしかない。800haも栽培していたのは40年前の75年頃まで遡らないといけない。ヨーロッパと日本の規模の差をこの辺りで感じる。
EUの麻市場は、2010年度の一次加工会社の出荷額ベースで50~60億円、栽培面積は1万haだった。2012年度は1万4000haに増加し、70~80億円市場と推測されている(表2)。
EUの一次加工会社のヒアリング調査によると、麻幹は、建築分野で今よりも4~6倍の市場に拡大し、麻繊維はバイオ複合材料で約4倍、種子では約6倍の市場規模が期待できるという。一方で低成長な市場は、動物用敷料や紙の分野で、増加したとしても今の3倍未満に留まる見込みである。
麻の複合素材の市場の開拓は、グリーン化の成功例の一つである。ノバ研究所のライフサイクルアセスメント(LCA)によると、複合素材の30%に麻繊維を使えば、温室効果ガスに換算して30~75%の削減となることが明らかになっている。EIHAは欧州農業共通政策(CAP)のグリーン化を支持しているが、バイオ燃料に偏っており、天然繊維への支援がないことが大きな問題と指摘している。麻の需要を適切に伸ばしていくためには、2020年までにバイオ燃料がEUの燃料需要の10~20%を獲得するという政策誘導の縛りを外す必要があるという評価をしている。
ヨーロッパ事情についてさらに詳しいことは、「第10回ヨーロッパ産業用大麻協会(EIHA)国際会議視察レポート(注1)」にまとめて紹介した。
注1:
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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