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特集

農業での雇用を考える

雇用とは難しい問題である。ましてや農業には多様な現場があり、一般的な方法論はそれこそ通用しないだろう。読者にアンケートを取り、取材もした。だが、どれが正解という判断はできるものではない。そこで今回、それらのありのままの情報を紹介することにした。何か一つでも役立つものがあればと願うところである。 (取材・文/平井ゆか、永井佳史)

本誌の読者(過去を含む)を対象にウェブとファクスで農場での人材の採用と雇用に関するアンケート調査を行なった。有効回答数は27。
まず初めに、問11の「現在の雇用は身内だけで経営する以上の収益を生み出しているか?」から迫りたい。「収益の増加に寄与している。」が最も多く、14件で全体の56%を占めた。「どちらともいえない。」が7件で28%と続き、「収益よりむしろ支出が上回っている。」と無回答がそれぞれ2件で8%ずつだった。
業種別では、水田・畑作は「収益の増加……」と「どちらとも……」が5件ずつで42%、施設園芸が絡んだところでは「収益の増加……」が4件で57%、同じく畜産は4件で67%と、年間を通して仕事が一定しているものほど収益の増加に寄与していることがわかった。
今回のアンケートでは身内だけで経営しているケースが2件しかなかった。台湾やシンガポールにコメを輸出しているという新潟県の回答者は身内以外で3人の正社員を雇用しているが、これについて次のように語る。
「身内だけで固まる農業法人は家族経営のレベルと何も変わらない。他人を雇用することで高いレベルの農業法人をつくりたかった」
北海道で唯一の回答者もそれと似た視点で雇用を考えている。
「農家レストランを開店するにあたって、経験ある人材を招き入れ、農業生産しかできなかった農家が飲食店を行なえるようになった」
ただ、回答内容から判断する限り、労働力不足を補うものとして雇用しているケースが一方でそれなりにある。これは、農場の経営ビジョンによって異なってくるが、いずれの場合でも雇用する以上はまずもってそこがしっかりしていないと採用もうまくいかないだろう。

ネックとなる採用活動と雇用後の定着率

問5の「採用で重視している条件」はどの回答者もおおむね共通している。とはいえ、ハローワークなどを利用しながらも思うような成果が挙げられていないところがほとんどのようである。ここで本誌2013年8月号まで12回にわたって連載していた「西田裕紀のあの農場はこうして採用に成功した!」を振り返ってみたい。採用活動(求人広告、12年11月号)と雇用後の定着(同年9月号)について抜粋する。
求人を行なう際の重要なポイントは次の3つである。まず、農場のアピールでは、応募者に「自分に合っていそうだ」と思わせるような表現を意識するとともに、経営ビジョンを明確に記載することが効果的だという。次は福利厚生である。問7で労働保険と社会保険の加入状況を聞いているが、完備しているところは12件と48%に上った。これは、回答者の半分がおそらく法人ということと関連しているのだろうが、個人事業主でも雇用保険と労災保険は加入していたほうが求職者は安心して応募できるという。最後は最も肝心な写真である。たくさんの求人広告が並ぶ情報誌やウェブサイトで一番初めに目に飛び込んでくるのは写真にほかならない。ここで農場の若い男性たちが一生懸命に収穫している写真をメインで使用したりしてアピールすれば、ターゲットに訴求できる求人広告になるという。要は欲しい人材像と求人広告の内容を近づけることである。会社案内の作成でも同じことがいえるだろう。
雇用後の定着率の低さということでは求職者・被雇用者側と雇用者双方が思い描いていたものとの不一致に行き着く。前者は「思ったより仕事が辛い」「農業のイメージと違った」、後者は「実際に雇ってみると使えない」といったありがちな理由である。このマッチング精度を上げるための方法は次の三点になるという。諸条件の契約を結んだうえで試用期間を3カ月設ける。本採用する基準を作成する。試用期間中は農場長ではなく、一番新しいスタッフを教育係としてつける。理由を探り、それを一つずつつぶす工夫をすれば解決の糸口は見えてくるという。

問うべきは我、経営者も試されている

最後に、問10で聞いた「従業員の意識を高く持たせ、農場(会社)全体の生産性や収益性を向上させるためのコツ」に触れて締めくくりたい。前述のとおり、従業員に経営ビジョンの提示とその理解は従業員が働いていくうえでの基本になる。農場内や顧客からの評価はやりがいをかき立てるだろう。“声”だけではなく、給与など待遇面への反映も外せない。それらのことがモチベーションとなり、農場で自身の役割を果たそうという気持ちも高まってくる。そのためには経営側がその舞台を用意し、一緒に農場を発展させていくための環境を整えていかなければならない。農業といっても経営品目や事業領域によって求められる人材は一様ではない。しかし、採用でも雇用でも何が問われるかというと経営者自身である。そのことを肝に銘じるべきだろう。

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