ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

江刺の稲

「農村経営研究会」へのご参加をお呼びかけします

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第210回 2013年10月21日

  • この記事をPDFで読む
    • 無料会員
    • ゴールド
    • 雑誌購読
    • プラチナ
妻の両親が健在だったころ、盆暮れや連休に岩手県の山村にある妻の実家に帰っていたが、筆者は小学校の5年間を熊本県で過ごしたことを除けば人生の大半を東京で暮らしてきた。そうであればこそ、農業や農山漁村に対する憧れ、その風土に誇りと愛着を持って生きる人々への共感が人一倍強いのかもしれない。
話は飛躍するが、農業界や地方行政関係者は中山間地域の持つハンデを強調し、国のさらなる財政的支援を求める主張をしている。人々がそこに暮らすことで守られてきた山里の風土を守ることに国が一定の負担をすることは当然だと思う。しかし、財源に限界があるからだけでなく、財政負担による中山間地域支援策を求めることでは問題の解決にならない。それだけでなく、行政が出す補助金を目当てにした取り組みに慣らされてきた地域では、その行政依存がそこに生きる者の自助、互恵による地域を守る努力、その地域を現在の社会や顧客にとってより魅力あるものにしていくための努力を結果として損なわせることにつながっている。
農山村には都会では願っても与えられない時代が求める経営資源に満ちあふれている。それを自ら産業化していく“農村経営者”の活躍の場とすべきなのである。そして、企業との連携で活性化する。
かつて官主導で流行った“一村一品”運動は、日本中に同じような売れもしない“百村一品”をはんらんさせ、補助金で作られたそもそも地域に似つかわしくもない建造物が廃墟化してその維持管理のために地域行政が苦しんでいるではないか。
地域の風土や文化への誇り、そこに生きる者への愛着を持つ農業経営者をはじめとする地域事業経営者たちが、自らの経営を一歩踏み越え、市町村長などの行政リーダーと連携を持ちながらも事業経営者としての高い理想を持って村を経営する“農村経営者”になるべきなのだ。
さらに、全国の農村経営者たちが中心となり、地域企業や全国レベルの企業と連携しながら地域を産業的に再構築すべきなのである。かつて期待された企業誘致とは違う。さまざまな企業と協力しながらも、そこにしかない、どこにも持ち出すことのできない風土や文化や人々こそを経営資源にした地域固有の新たなビジネスを構築すべきなのだ。

関連記事

powered by weblio