記事閲覧
3 合意による解約
本件の特約が無効であるとしても、賃貸人から解約の申し出があり、賃借人もこれに納得して応じるのであれば、合意解除として有効となります。両者共に解約を望んでいる以上、両者を契約に縛り付けておく意味がないからです。
この場合、原則として、都道府県知事の許可が必要です(農地法18条)。ただ、期間の定めのある賃貸借の場合、農地の返還期限前6か月以内に成立した合意で、その合意内容が文書で明らかになっている場合は許可が不要となり、農業委員会への通知で足ります。
4 注意点
以上のとおり、ご質問者のケースでは、いずれにしろ特約自体無効なのですが、3で述べたとおり、解約することについて両者の「合意があった」と見なされると、解約有効となります。
よく意味がわからずに合意文書に署名押印してしまった場合や、半ば強引に署名押印させられてしまった場合でも、「合意があった」ものと強い推認が働き、それを覆すのは容易ではありません。(農地法18条の許可が出てしまった場合はさらに絶望的です。)。
合意文書に限りませんが、何らかの文書に署名押印したことにより、後で大きな不利益を被るケースは珍しくありません。文書への署名押印は、その場ですぐに対応するのではなく、持ち帰って、弁護士に相談することをお勧めします。よほど専門的かつ複雑な契約書でなければ、多額の報酬を請求されることはないはずですから、紛争を「予防する」という観点で弁護士を利用するのが得策です。
会員の方はここからログイン
戸出健次郎 トデケンジロウ
弁護士
平成12年 学習院大学法学部卒、平成19年 弁護士登録(第一東京弁護士会所属)、平成22年 悠綜合法律事務所パートナー、平成22年度第一東京弁護士会代議員、専門分野:農業分野(法務、税務)、不動産関連業務。
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)