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日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識

麻商品の輸入の現状とポイント

本連載では、大麻草を研究テーマに掲げて博士号を取得した赤星栄志氏が、科学的な視点でこの植物の正しい知識を解説し、国内での栽培、関連産業の可能性を伝える。日本国内では麻の生産がほとんどないために、麻商品は輸入に依存している。これまでに発生した「大麻輸入未遂事件」になりかねないトラブルの事例を紹介しながら、輸入の現状とポイントを紹介する。
 大麻草(以下、麻とする)からできた商品で商売を始めようとしたとき、原材料の調達という大きなハードルがある。日本国内で栽培しているところはほとんどないので、商売ロットで考えると必然的に海外からの輸入に頼らざるを得ない。

 しかしながら、いざ麻製品を輸入しようとしても税関で引っかかるのではないか?と思わず考えてしまう。どこまでが合法でどこからが違法なのかは、素人から見ると全く分からないことだらけである。実際にあった麻商品輸入時のトラブルを紹介しながら、日本への輸入についてのポイントを挙げていく。


麻布や麻糸の輸入

 貿易取引では国際的なルールとしてHSコードをつけることが義務付けられている。HSコードとは、あらゆる物品につけて、貿易上、それが何であるのかを世界各国で共通して理解できるよう取り決めた6桁の分類番号のことである。1983年に「商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約(HS条約)」として採択され、88年1月に発効した。全部で5052項目あり、97類1220項にまとめられている。表1に日本に輸入可能な麻商品のHSコードをまとめた。麻布や麻糸のHSコードは「その他の植物性紡織用繊維・その織物、紙糸・その織物」(第11部第53類)に分類される。

 90年代後半から麻布や麻糸を輸入してきた業者によると、当初はただの布なのに原料名に「大麻」の表記があれば試薬で検査されたという。さすがに今ではそのようなことはないが、税関という役所は、不正な貿易取引を取り締まるところなので、大麻という文字には敏感だ。とはいえ、大麻取締法では麻茎と種子は規制の対象外なので、麻布や麻糸は何の問題もない。



輸入差し止めの原因は
オガラに混入した葉っぱの小片

 麻の一次加工方法やヨーロッパの事例で紹介した麻の繊維とオガラの分離は、100%完璧にしようと思うとかなり難しい。私が知っている範囲ではオガラの輸入に失敗して100万円単位の損失を出してしまった例がある。それは、オガラの中にほんのわずかな麻の葉っぱが混ざっていたからである(写真1)。

 馬の敷わらとして利用するつもりだったオガラは、窓口となった税関のとても熱心な検査によって爪の先にも満たない小片の葉っぱが見つかったため、輸入差し止めとなった。税関職員は1tのオガラをふるいにかけて、葉とオガラをきれいに分離すれば輸入許可できると言ってきたが、その作業手間とコストを考えると、とてもじゃないけれど無理な話である。

 例えば、1tのオガラの中に1%の葉っぱや種子を含む夾(きょう)雑物があると、オガラの中に10分の「大麻(葉)」を巧妙に隠したという大麻輸入未遂事件になってしまうのである。こうなると、たいていは輸入品を任意放棄して、税関に焼却処分をお願いすることになる。当然、お客からはクレームが来るし、材料代、郵送費、輸入手続費用は全額負担となってしまう不条理な世界だ。

 オガラを安心して輸入するには、葉っぱが1枚も混入しないクリーニングシステムを持つ一次加工会社を選ばないといけない。ちなみに、EUで栽培されているマリファナ(THC)成分0・2%の産業用の品種であっても、日本の税関ではほんのわずかな量でも引っかかってしまう。大麻取締法によって品種に関係なく葉の部分については輸入が厳しく禁じられているためである。

 オガラは麻の繊維を剥いだあとに残る茎で、HSコードでは、第44類の木材およびその製品ならびに木炭の「のこくず・木くず」に分類される。植物学上もオガラのところを木質部と呼んでいることからも、意外にも科学的に妥当な解釈をHSコードで採用している。

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